美容室のリピート率の計算方法|式より大事な「期間の決め方」
式は単純ですが、期間を決めないと同じデータから2倍以上違う数字が出ます。電卓だけで意味のある数字を出す手順をまとめました。
「リピート率の計算式」を調べると、たいていこう書かれています。
リピート率(%)= 再来店客数 ÷ 総顧客数 × 100
この式は、そのままでは使えません。分母の「総顧客数」が何を指すのか、分子の「再来店客数」をいつまで数えるのかが決まっていないからです。ここが決まらないまま計算すると、同じ店の同じデータから、2倍以上違う数字が出ます。
この記事では、電卓とメモ用紙だけで、意味のある数字を出す手順を示します。ツールは要りません。
計算したあとの打ち手は美容室のリピート率を上げる方法に、エクセルでの実装はリピート率をエクセルで管理するにまとめています。
前提として押さえる数字 美容室の年間利用回数は女性 4.18回(前年比−2.8%)、男性 5.05回(同−3.6%)。1回あたり単価は女性7,668円・男性4,879円で横ばいです(リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2026年上期【美容室編】」)。 来店が年4回台ということは、計算期間を短く取りすぎると「まだ来る予定の方」を失客に数えてしまうということです。期間設定が、この計算で最も重要な部分になります。
1. まず、3つの指標を分ける
「リピート率」という1語で、まったく違う3つの数字が語られています。混ぜないでください。
| 指標 | 計算式 | 何を判断するか |
|---|---|---|
| 初回リピート率 | 2回目に来た新規客数 ÷ 新規客数 | 新規の受け皿ができているか |
| 既存継続率 | 当期も来た既存客数 ÷ 前期の既存客数 | 常連が離れていないか |
| 失客率 | 一定期間来ていない既存客数 ÷ 既存客数 | どれだけ抜けたか |
見るべき場面が違います。
- 新規は取れているのに売上が伸びない → 初回リピート率
- 売上がじわじわ落ちている → 既存継続率
- 名簿は増えるのに稼働客が増えない → 失客率
多くの記事が「リピート率」と呼んでいるのは、このうちの初回リピート率です。以下、まずこれを出します。
2. 期間を、来店サイクルから決める
2-1. なぜ「90日」ではいけないのか
多くの記事が90日を勧めますが、根拠がありません。自店の来店間隔によって、適切な期間は変わります。
同じ店の同じデータでも、期間を変えるだけでこうなります。
| 集計期間 | 初回リピート率 |
|---|---|
| 30日以内 | 12% |
| 60日以内 | 38% |
| 90日以内 | 57% |
| 180日以内 | 71% |
| 365日以内 | 79% |
同じ店です。期間を書かずに「リピート率」と言うことに、ほとんど意味がないと分かります。
2-2. 決め方
初回リピート率の測定期間 = 来店サイクルの中央値 × 2
サイクル中央値が52日なら104日。60日なら120日です。
×2にする理由は、1回分の来店機会を逃した方まで含めて「まだ戻る可能性がある」と見るためです。1周期分だけで区切ると、少し遅れただけの方を失客に数えてしまいます。
既存継続率の場合は×1.5が目安です。既存客はサイクルが安定しているため、初回ほど余裕を見る必要がありません。
2-3. 来店サイクルの中央値の出し方
平均ではなく中央値を使ってください。年に1回しか来ない方が数人いるだけで、平均は大きく引っ張られます。
- 2回以上来ている方について、前回と今回の間隔(日数)をすべて書き出す
- 小さい順に並べる
- ちょうど真ん中の値が中央値(偶数個なら中央2つの平均)
30人分あれば十分な目安になります。詳しい手順は美容室の来店サイクル(来店周期)の測り方にまとめています。
3. 初回リピート率を計算する
3-1. 手順
例:来店サイクル中央値が52日の店。測定期間は104日。
- 起点となる月を決める(例:4月)
- 4月の新規客数を数える(例:100名)
- その100名それぞれについて、初回来店日から104日以内に2回目があったかを確認する
- 該当した人数を数える(例:29名)
- 29 ÷ 100 × 100 = 29%
3-2. 起点の月の選び方
今日から104日以上前の月を選んでください。まだ104日経っていない月は、計算しても確定しません。
今日が8月28日なら、104日前は5月16日。確定値を出せるのは4月以前の新規です。
これは重要な制約です。「先月のリピート率を知りたい」は、原理的にできません。直近の状況を知りたい場合は、リピート率ではなく次のいずれかを見てください。
- 次回予約の取得率(当月のうちに分かります)
- 来店サイクル中央値の推移(翌月から動きます)
- 遅れリスト(平均間隔×1.3を超えた方)の人数
3-3. 数える範囲の注意
| 注意点 | 扱い |
|---|---|
| 同月内に2回来た新規 | 2回目としてカウントします(前髪カット等も含む) |
| 他店から移ってきた方 | 自店では新規として扱います |
| 予約なしの飛び込み | 新規に含めます(除外すると母数が変わります) |
| 家族・スタッフ | 除外します(判断が歪みます) |
一度決めたら変えないでください。変えると時系列が追えなくなります。
4. 既存継続率を計算する
4-1. 手順
例:測定期間は中央値52日 × 1.5 = 78日。ここでは分かりやすく四半期(90日)で区切ります。
- 前期(1〜3月)に来店した既存客数を数える(例:420名)
- そのうち、当期(4〜6月)にも来店した人数を数える(例:298名)
- 298 ÷ 420 × 100 = 71%
4-2. 「既存客」の定義を決める
ここも決めが必要です。一般的には次のいずれかです。
| 定義 | 向く店 |
|---|---|
| 2回以上来店した方 | 標準的。おすすめ |
| 直近1年以内に来店した方 | 名簿が大きい店 |
| サイクル×3以内に来店した方 | サイクルが明確な店 |
「累計顧客数」を分母にしないでください。何年も前に一度来ただけの方が入り、数字が意味を失います。
5. 分解して、原因を特定する
全体の数字を出しただけでは、打ち手が決まりません。分けて見ることで、初めて原因が見えます。
| 分け方 | 見えること |
|---|---|
| 流入経路別 | 割引クーポン経由が全体を押し下げていることが多い |
| 担当者別 | 教育で埋まる差か、客層の違いか |
| メニュー別 | カラーだけ低いなら色持ちの問題 |
| 曜日・時間帯別 | 混雑時に説明が省かれていないか |
| 性別・年代別 | 客層と提供内容が合っているか |
最も発見が多いのは流入経路別です。全体が29%でも、クーポン経由15%・紹介60%ということが普通に起こります。平均で見ている限り、この差は見えません。
担当者別の数字の扱い方はスタッフ別リピート率の見方に、現場を壊さない使い方まで書いています。
6. 1ポイントがいくらになるかを出す
計算する目的は、打ち手にいくらまで手間をかけてよいかを決めることです。
年間の増加売上 = 年間新規客数 × 改善するリピート率(ポイント) × 平均来店回数 × 客単価
例:年間新規1,200名、客単価8,000円、リピート後の年間来店回数3回
| 初回リピート率 | 2回目に進む人数 | 年間売上 |
|---|---|---|
| 25% | 300名 | 720万円 |
| 30% | 360名 | 864万円 |
| 35% | 420名 | 1,008万円 |
5ポイントで年144万円、月12万円です。この金額が、施策にかけてよい手間の上限になります。
7. よくある間違い
7-1. 分母に累計顧客数を使う
3,200名の名簿のうち、1年以内に来たのが510名。ここで「510 ÷ 3,200 = 16%」と計算しても、それはリピート率ではなく稼働率です。指標として有効ですが、別物として扱ってください。
7-2. 期間を書かずに他店と比べる
「うちは35%、平均は28%だから良い」——比較になっていません。相手が30日で測り、自分が180日で測っていれば、数字の意味が違います。
7-3. 出所の分からない平均値と比べる
よく引用される「新規28.1%・既存70.9%」は、公開された調査に遡れません。調査主体・時期・対象・定義のいずれも確認できません。
出典が明確な一次調査は存在します。この記事で使っている美容センサス(リクルート ホットペッパービューティーアカデミー)、帝国データバンク、厚生労働省などです。平均値は、そこにありません。
7-4. 毎月定義を変える
分母や期間を変えると、前月と比べられなくなります。一度決めたら、少なくとも1年は変えないでください。
7-5. 施策を5つ同時に始めてから測る
どれが効いたか分かりません。1度に変えるのは2つまでです。
8. よくある質問(FAQ)
Q1. 美容室のリピート率の計算式を教えてください。 A. 初回リピート率=2回目に来た新規客数÷新規客数×100、既存継続率=当期も来た既存客数÷前期の既存客数×100です。ただし式より重要なのが期間設定で、初回リピート率は来店サイクル中央値×2、既存継続率は×1.5を目安にしてください。期間を決めずに計算すると、同じデータから2倍以上違う数字が出ます。
Q2. 期間は90日でよいですか。 A. 自店の来店サイクルによります。中央値が52日の店にとって90日は1.7周期分で、1回分の来店機会を逃しただけの方まで失客に数えてしまいます。中央値×2(この例では104日)を使ってください。
Q3. 先月のリピート率を知りたいのですが。 A. 原理的に測れません。中央値52日の店なら104日経たないと確定しないため、今日が8月末なら確定値を出せるのは4月以前の新規です。直近の状況は、次回予約の取得率、来店サイクル中央値の推移、遅れリストの人数で見てください。
Q4. 分母は累計顧客数でよいですか。 A. 使わないでください。何年も前に一度来ただけの方が入り、数字が意味を失います。初回リピート率なら「その月の新規客数」、既存継続率なら「前期に来店した既存客数」が分母です。累計顧客数を使った計算は稼働率であり、別の指標として扱ってください。
Q5. 平均は何%を目指せばいいですか。 A. 出典が確認できる公開調査に、美容室のリピート率の平均値はありません。よく引用される数値は調査に遡れず、しかも分母と期間で2倍以上変わるため、比較の基準になりません。他店ではなく、定義を固定した自店の前月・前年同月と比べてください。
Q6. エクセルで自動化できますか。 A. できます。COUNTIFS関数で期間内の再来店を数える形が基本です。関数つきの手順はリピート率をエクセルで管理するにまとめています。ただし、まず手計算で1回出して、数字の意味を掴んでからのほうが失敗しません。
9. まとめ
- 「リピート率」は3つの別々の指標です。初回リピート率・既存継続率・失客率を混ぜないでください
- 式より期間が重要です。初回は来店サイクル中央値×2、既存は×1.5
- 分母に累計顧客数を使わないでください
- 分解して初めて原因が見えます。特に流入経路別
- 1ポイントがいくらかを出してから、施策を選んでください
数字を出したあとの打ち手は美容室のリピート率を上げる方法に、順番をつけてまとめています。
出典・参考
- ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2025年上期【美容室編】」 市場規模・単価・来店回数の一次データ
- 帝国データバンク「美容室の倒産動向調査(2025年)」 倒産235件で過去最多。設立10年未満が49.0%
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