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美容室の客単価を上げる方法|値上げで失客しないための順番と実務

客単価を10%上げても年間の来店が1回減れば値上げ前を下回ります。値上げをせずに単価を上げる4つの道、価格改定の時期・幅・告知文面、改定後に測る指標まで、失客を最小限にする順番でまとめました。

編集 山本 最終更新 読了 約28分
美容室の客単価を上げる方法|値上げで失客しないための順番と実務

「客単価を上げたい」——美容室の経営でいちばん多く聞く言葉かもしれません。客数を増やすのは大変ですが、単価なら自分の判断で動かせる。そう考えるのは自然です。

ただ、先に事実をひとつお伝えします。

美容室市場は前年比 −5.9%。ところが1回あたりの単価は女性7,686円で前年比+0.2%と、ほぼ横ばいです。落ちているのは年間の来店回数で、女性4.18回・前年比−2.8%。 (出典:リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2026年上期」/調査期間2026年1月21日〜2月12日、全国・人口20万人以上の都市の15〜69歳、男女各6,600サンプル)

市場が縮んでいる原因は単価が安いことではなく、来店回数が減っていることです。そして同じ調査で、利用が減った理由の第2位に挙がっているのが「サロンの料金改定(値上げ)」でした。第1位は「美容代を節約する必要が出てきた」(女性40.8%)です。

つまり——値上げは効きます。ただし実際に、お客様を減らしています。

この記事は「客単価を上げる方法10選」ではありません。上げてよい状態かをまず判断し、そのうえで失客を最小限にして上げるための、順番と実務をまとめたものです。

1. 客単価を4つに分けて出す

「うちの客単価は8,000円」と言うとき、その数字が何を指しているかで打ち手はまったく変わります。まず4つに分けてください。

指標計算式何が分かるか
総客単価総売上 ÷ 延べ来店客数全体の水準
施術客単価施術売上 ÷ 延べ来店客数技術メニューの構成
店販客単価店販売上 ÷ 延べ来店客数店販がどれだけ乗っているか
新規客単価/既存客単価それぞれの売上 ÷ それぞれの客数割引の影響がどこに出ているか

最後の「新規/既存で分ける」を、多くのサロンがやっていません。 ここを分けないと、総客単価が下がった原因が「既存のお客様の単価が落ちた」のか「割引クーポンの新規が増えて平均が引っ張られた」のか区別できません。

対処はまったく逆になります。前者ならメニューや提案の見直し、後者なら単価はむしろ健全で、集客の構成が変わっただけです。後者を前者と誤診して既存のお客様に単価アップを迫ると、失客につながります。

延べ人数と実人数を混ぜない

客単価は「延べ来店客数」で割ります。実人数(ユニーク)で割ると、来店回数の多いお客様がいるサロンほど単価が高く見えてしまいます。毎月同じ定義で出すことが、他店との比較よりずっと大切です。

2. 「平均◯円」という数字の扱い方

検索すると「美容室の平均客単価は◯円」という数字がいくつも出てきます。ただ、その多くは調査主体・調査時期・対象が示されていません。

実際に上位に出てくる記事を確認すると、調査名を書かずに「調査によると」とだけ書いているもの、プレスリリース配信サイトを出典としているものが並びます。プレスリリースは一次情報ではありません。

数字を使う前に、次の3つを確認してください。

  1. 誰が調べたか(調査主体)
  2. いつ調べたか(調査時期)
  3. 誰に聞いたか(対象・サンプル数・地域)

この3つが揃っていない数字は、目安としても使わないほうが無難です。立地・客層・メニュー構成で客単価は大きく変わるため、平均値との比較にはもともと意味が薄いという事情もあります。

見るべきは他店の平均ではなく、自店の推移です。

3. 単価を上げると、回数が減る

ここがこの記事の核心です。

年間の売上は、こう分解できます。

1人あたり年間売上 = 客単価 × 年間来店回数

客単価を10%上げても、来店回数が10%減れば、年間売上はほぼ変わりません。むしろ接客の手間は同じで、来ていただける機会だけが減るので、関係は薄くなります。

具体的に計算してみます。

現状単価を10%上げた場合回数が1回減った場合
客単価8,000円8,800円8,800円
年間来店回数4.2回4.2回3.2回
1人あたり年間売上33,600円36,960円28,160円

単価を10%上げても、年間の来店が1回減るだけで、値上げ前を下回ります。

そして冒頭のとおり、値上げは実際に来店を減らす要因として調査で挙がっています。「単価を上げれば売上が上がる」は、この力学を無視した計算です。

髪は伸びる速度が決まっている

美容室特有の事情もあります。来店の間隔は、髪が伸びる速度と、お客様が気になる度合いで決まります。 値上げをすると、多くの場合お客様は来店をやめるのではなく、間隔を伸ばして調整します。

2か月ごとだった方が2か月半になる。これだけで年間6回が4.8回になります。失客としては見えないため、気づくのが遅れます。

だからこそ、値上げの影響は「何人辞めたか」ではなく「来店間隔が伸びていないか」で見る必要があります。

4. だから順番は「回数 → 単価」

以上から、取り組む順番が決まります。

  1. まず来店回数を戻す。 来店間隔を測り、次回のご案内を出す仕組みを作る
  2. 回数が安定してから、単価に手を付ける。

逆にすると、単価を上げた分を回数の減少が打ち消し、しかも回数が落ちた状態が固定します。一度伸びた来店間隔は、放っておいても戻りません。

来店回数の戻し方は美容室の来店サイクルの測り方リピート率 完全ガイドにまとめています。

例外:いま赤字なら順番を待てない

原価が上がって赤字が出ている場合、回数の改善(数か月かかります)を待てないことがあります。その場合は値上げが先になりますが、失客を織り込んだうえで判断してください。 判断材料は「赤字で待てない場合の判断」の章に置きました。

5. 値上げをせずに単価を上げる4つの道

「単価を上げる=値上げ」ではありません。同じ価格表のまま単価が上がる方法が4つあります。こちらを先に試すのが原則です。

方法何をするか単価への効き方失客リスク
① メニュー構成選ばれる組み合わせを変える中〜大
② オプション提案必要な方に必要なものを足す小(やり方次第)
③ 店販施術外の売上を乗せる小〜中ほぼなし
④ 指名・担当固定指名料と提案の質が上がる小〜中なし

① メニュー構成を変える

価格を変えずに単価を動かす、いちばん確実な方法です。

やること:直近3か月の伝票から、メニューの組み合わせ別に件数と売上を出します。 上位10パターンで全体の何割を占めているかを見てください。多くのサロンで上位5パターンが7割前後を占めます。

そのうえで、次を確認します。

  • 一番出ている組み合わせの粗利はいくらか(売れているが儲かっていない組み合わせがよくあります)
  • 単品で終わっているお客様が何割か(カットのみ、カラーのみ)
  • その方に足せるものが、実際にあるか

単品のお客様が多い場合、メニュー表の並び順と見せ方で変わることがあります。単品を先に並べていると単品が選ばれます。組み合わせを先に、単品を後に置くだけで構成が動くことがあります。

② オプション提案を「押し売り」にしない設計

オプションで単価が上がるのは事実ですが、やり方を誤ると失客に直結します。

押し売りにならない条件は3つです。

  1. 理由が髪の状態に紐づいている。 「今日は乾燥が強いので」のように、目の前の状態を根拠にする
  2. 断りやすい言い方をしている。 「今日はやめておきますか?」と選択肢を残す
  3. やらなかった場合どうなるかも伝える。 「やらなくても大丈夫ですが、1か月後に色が抜けやすくなります」

逆に、毎回同じオプションを全員に勧めるのは最も効きません。 お客様は「またか」と感じ、提案自体を聞かなくなります。

記録を残しておくと、次回に「前回このお話をしたので今日は」と変えられます。カルテの作り方は顧客カルテ 項目テンプレートをお使いください。

③ 店販を乗せる

店販は施術と粗利率が違うため、単価と利益に別々に効きます。

美容センサス2026年上期では、店販購入率は女性12.9%(前年比−1.5pt)、購入者の年間店販総額は女性1万2,445円でした。購入率は下がっていますが、購入する方の金額は小さくありません。

全員に売る必要はありません。 買う方に、必要なものが届いていればよい、という設計にしてください。詳しくは店販で「しつこい」と思われない売り方店販比率の計算ツールへ。

④ 指名・担当固定

指名が付くと、提案が通りやすくなります。「この人が言うなら」という関係ができるためで、オプションも店販も、指名のあるお客様のほうが受け入れられやすいのが実感としてあります。

指名率の見方は指名率とリピートの関係にまとめました。

6. メニュー価格の設計

価格そのものを設計し直す場合の考え方です。

3段階にする

同じカテゴリで3つの選択肢を用意すると、多くの方が真ん中を選びます。 これは価格の見え方の性質によるもので、美容室に限りません。

ただし注意点が2つあります。

  • 上を「選ばれないための当て馬」にしない。 実際に価値のあるものにしてください。当て馬だと見抜かれると信頼を失います
  • 下を極端に安くしない。 下に集まると全体の単価が落ちます

分かりにくい価格表は選ばれない

美容センサス2026年上期では、初回来店時にサロン選びで重視することとして「料金が明確」が女性25.3%で第3位に入っています(1位「自宅から近い」33.3%、2位「料金がリーズナブル」27.0%)。

「〜」で幅を持たせた価格や、条件が多い価格は、それだけで選ばれにくくなります。 単価を上げる前に、まず分かりやすくすることを検討してください。

原価と時間で見る

メニューごとに次を出してください。

見る項目出し方
材料費薬剤・カラー剤などの実費
施術時間セット面を占有する時間
時間あたり粗利(価格 − 材料費)÷ 施術時間

時間あたり粗利がいちばん重要です。 単価が高くても3時間かかるメニューは、1時間のメニュー3回に負けることがあります。席数に限りがある以上、時間は在庫と同じです。

7. 客単価が下がったときの症状別診断

「単価が落ちた」と気づいたとき、原因を特定せずに手を打つと外します。症状から原因をたどってください。

症状考えられる原因最初に確認すること
総客単価は下がったが、既存客の単価は変わらない割引の新規が増えて平均が下がった新規/既存の比率の変化
既存客の単価だけが下がったオプションや店販の提案が減った提案件数の推移。スタッフ別に見る
施術単価は変わらず店販単価が下がった店販の声かけが止まっている店販の販売本数、担当別
単価も回数も下がった満足度か、競合の影響失客率と、離れた方の共通点
単価は上がったが売上が減った来店間隔が伸びた平均来店間隔(値上げ後によくあります)
特定の曜日・時間だけ単価が低い客層が違う曜日別・時間帯別の単価

「スタッフ別に見る」が抜けやすいところです。 店全体の平均では見えなくても、特定のスタッフの提案が止まっていることがあります。責める材料にするためではなく、何が起きているかを知るために見てください。

曜日・時間帯で分けると打ち手が変わる

平日の昼と土曜の午後では、来店される層が違います。平日昼の単価が低いのは自然なことで、これを土曜と同じにしようとすると無理が出ます。

むしろ平日昼は、時間に余裕のある層に、時間のかかるメニューを提案するほうが噛み合います。同じ「単価を上げる」でも、時間帯で打ち手が変わります。

8. 時間あたり粗利で見る——具体例

「メニュー価格の設計」で触れた「時間あたり粗利」を、実際の数字で出してみます。

メニュー価格材料費施術時間粗利時間あたり粗利
カット5,500円100円60分5,400円5,400円
カット+カラー12,000円1,500円120分10,500円5,250円
カット+パーマ14,000円1,800円150分12,200円4,880円
縮毛矯正18,000円2,500円210分15,500円4,429円
カット+トリートメント8,500円800円80分7,700円5,775円

※上表は計算方法を示すための例です。価格・材料費・施術時間はご自身の数字に置き換えてください。

この例では、単価が最も高い縮毛矯正(18,000円)の時間あたり粗利が最も低く、単価8,500円のカット+トリートメントが最も高くなっています。

ここから何が読めるか

  • 単価の高いメニューを推すことが、必ずしも利益に効くわけではない
  • 席数と営業時間には上限があるため、時間は在庫と同じ
  • 満席が続いているサロンでは、時間あたり粗利の低いメニューが枠を埋めている可能性がある

ただし注意点があります。 時間あたり粗利だけで判断して長時間メニューをやめると、そのメニューを目当てに来ていたお客様を失います。空席がある時間帯には長時間メニューを、混む時間帯には回転の良いメニューをという配置のほうが現実的です。

予約の受け方で調整できる部分でもあります。

9. カウンセリングで提案が通る型

オプションが単価に効くかどうかは、カウンセリングの質でほぼ決まります。

通らない提案の共通点

  • 施術の最後に言う(もう帰る気持ちになっています)
  • メニュー名から入る(「トリートメントいかがですか」)
  • 全員に同じことを言う

通る提案の型

① 最初のカウンセリングで、状態を言葉にする

「今日、毛先の乾燥が少し出ていますね。前回から少し間が空きましたか?」

ここではまだ提案しません。 状態を共有するだけです。

② 施術の途中で、選択肢として出す

「さきほどの乾燥のところ、今日ケアを足しておくこともできますし、今日はこのままで次回でも大丈夫です。どうされますか」

やらない選択肢を明示するのが要点です。断る負担がなくなります。

③ 選ばれなかったら、記録に残す

(カルテ)2026/08/25 毛先の乾燥あり。ケア提案→今回は見送り。次回要確認。

次回に「前回お話しした毛先のところ、いかがですか」と続けられます。同じ提案を毎回するのではなく、前回の続きにする——これが押し売りにならない最大のこつです。

スタッフへの共有

型を決めたら、言い方まで揃えてください。 「提案しよう」という掛け声だけでは変わりません。上の①②③をそのまま渡し、月に一度、提案件数と成約件数を見てください。

成約率を評価にすると押し売りが始まります。 見るのは提案件数にとどめるのが安全です。

10. ケース別の進め方

規模と状況で優先順位が変わります。

一人サロンの場合

時間が最大の制約です。席数が1つなので、時間あたり粗利がそのまま売上の上限を決めます。

  1. まず時間あたり粗利を全メニューで出す
  2. 予約の埋まり方を見て、空席の時間帯に長時間メニューを寄せる
  3. 単価より先に、キャンセルと空席を減らす(一人サロンでは1件の空席の影響が大きい)
  4. そのうえで値上げを検討

一人サロンの詳細は一人美容室の開業ガイドにもまとめています。

スタッフがいる場合

スタッフ別のばらつきが最大の論点です。

  1. スタッフ別の客単価を出す(新規/既存を分けて)
  2. 差が大きい場合、提案の型が共有されていないことが多い
  3. 「カウンセリングで提案が通る型」をそのまま渡し、提案件数だけを見る
  4. 全体の底上げができてから、価格に手を付ける

スタッフ別の見方はスタッフ別リピート率の見方を参考にしてください。

開業して1年以内の場合

単価より客数と再来が先です。母数が少ないうちは単価を動かしても売上への影響が小さく、逆に失客の影響が大きく出ます。

開業直後の設計は開業初日から顧客台帳を作るへ。

ポータル経由の新規が多い場合

新規の単価が低いのは構造的です。クーポンで来ていただいている以上、初回単価は下がります。

見るべきは初回の単価ではなく、2回目以降に通常価格へ戻っているかです。戻っていなければ、割引が常態化しています。判断材料は新規1人あたり実質コスト計算ツールで出せます。

11. メニュー表の見せ方

価格そのものより、見せ方で選ばれるものが変わります。 印刷して並べ替えるだけでできる範囲を挙げます。

並び順

上から順に見られます。 単品を先頭に置けば単品が選ばれ、組み合わせを先頭に置けば組み合わせが選ばれやすくなります。

推していきたい構成を上に、単品を下に。これだけで構成比が動くことがあります。

数字の書き方

良くない書き方良い書き方理由
カラー 8,000円〜カラー(ショート)8,000円/(ロング)11,000円「〜」は上限が読めず不安になります
※長さにより変動肩より下は+3,000円条件を具体的に
12,000円12,000円(カット・シャンプー・ブロー込み)込みの内容を書くと割高感が消えます

美容センサス2026年上期で、初回のサロン選びで「料金が明確」を重視する方が女性25.3%(第3位)でした。分かりにくさは、それだけで選ばれない理由になります。

組み合わせの見せ方

単品を足し算した金額より、セットとして提示するほうが選ばれやすい傾向があります。

・カット 5,500円 ・カラー 8,000円 ・カット+カラー 12,000円(単品合計より1,500円お得)

割引に見せすぎないことが大事です。「お得」を強調しすぎると、単品を選ぶ方が「損している」と感じます。差額を小さく添える程度で十分です。

迷わせない

選択肢が多すぎると、いちばん分かりやすいもの(=単品)が選ばれます。 カテゴリごとに3つ程度に絞り、細かい違いはカウンセリングで説明する形にしてください。

12. 90日で進める手順

順番が決まっていても、何から手を付けるかで迷います。3か月の進め方を置いておきます。

1か月目:測る

やること出すもの
客単価を4つに分けて出す総/施術/店販/新規・既存別
平均来店間隔を出す中央値で(平均は外れ値に引っ張られます)
メニュー構成の上位10パターン件数と売上
メニュー別の時間あたり粗利全メニュー

この月は何も変えません。 変えてしまうと、後で効果が判定できなくなります。

2か月目:価格を変えずに動かす

やること見る数字
メニュー表の並び順を変える構成比の変化
カウンセリングの型を決めて共有する提案件数(成約率ではなく)
店販の声かけを1つに絞って統一する販売本数

3つ同時にやらないこと。 どれが効いたか分からなくなります。1つずつ、2週間ずつ試すのが確実です。

3か月目:判断する

状況次の手
構成比が動き、単価が上がった値上げは不要。この路線を続ける
構成比は動いたが単価が変わらない価格そのものに無理がある。「値上げの実務」へ
何も動かない提案が実行されていない可能性。現場を確認
来店間隔が伸びている単価より先に、そちらを止める

3か月やって動かない場合に、初めて値上げを検討します。 逆に言えば、多くのサロンは価格を変えずに動かせる余地を使い切っていません。

記録の付け方

毎月、同じ形で残してください。項目はこれだけで足ります。

延べ客数総売上総客単価施術単価店販単価新規客数新規単価平均来店間隔

表計算ソフトで十分です。 大事なのは道具ではなく、毎月同じ定義で続けることです。定義が変わると推移が読めなくなります。

13. 値上げの実務——いつ、いくら、どう伝えるか

※告知文面や想定質問への答え方まで含めた詳しい手順は美容室の値上げの進め方にまとめています。

ここからは実際に価格を上げる場合の手順です。競合の記事でほとんど触れられていない部分なので、細かく書きます。

いつ上げるか

時期向き不向き
繁忙期の直前避ける。 値上げ直後に来店が集中し、印象が悪くなります
閑散期向いています。 影響が出ても立て直す時間があります
材料費が上がった直後理由が説明しやすく、納得を得やすい
移転・改装のタイミング提供するものが変わるので説明が通りやすい

いくら上げるか

一度に大きく上げるより、幅を抑えて、間隔を空けるほうが失客は少なくなります。目安として、1回の改定は10%以内に収め、次の改定まで最低1年空けるのが無難です。

理由は単純で、お客様が「高くなった」と感じるかどうかは絶対額ではなく、前回との差で決まるためです。

誰に、どの順で伝えるか

これがいちばん大事です。順番を間違えると、常連のお客様から失います。

  1. 改定の1〜2か月前に、既存のお客様へ先に伝える。 来店時に口頭で、そのうえで文面でも
  2. 改定日まで旧価格で受けられる期間を設ける。 「◯月◯日までは現在の価格です」
  3. 新規のお客様には、改定後の価格だけを出す。 旧価格を見せない
  4. 改定後、しばらくは理由を聞かれる前提で構える

やってはいけないのは、告知なしに当日会計で伝えることです。 これは失客に直結します。

伝え方の文面

そのまま使える形にしておきます。

【価格改定のお知らせ】 いつもご来店ありがとうございます。 かねてより薬剤・材料の価格上昇が続いており、これまで店内の工夫で対応してまいりましたが、施術の質を保つため、◯月◯日より一部メニューの価格を改定させていただくことになりました。 改定前の価格でのご予約は◯月◯日のご来店分まで承ります。 引き続き、ご満足いただける仕上がりをお届けできるよう努めてまいります。

書き方のこつは3つです。

  • 理由を具体的に書く(「諸般の事情」は不信を招きます)
  • 何をしてきたかを書く(すぐ値上げに走ったのではないと伝わります)
  • 旧価格の期限を明記する(お客様が行動を選べます)

謝りすぎないことも大切です。過度な謝罪は「悪いことをしている」という印象を強めます。

14. 値上げ後に必ず測ること

値上げの成否は、売上ではなく来店間隔で判断します。売上は改定直後の駆け込みで一時的に上がるため、判断を誤ります。

測る項目いつ判断
平均来店間隔改定の3か月後・6か月後伸びていたら要注意
既存客の来店率6か月後改定前の同期間と比較
客単価(既存客のみ)毎月新規と混ぜない
1人あたり年間売上12か月後これが最終判断

改定の3か月後に来店間隔が伸びていたら、施策で補う必要があります。 次回のご案内を早めに出す、間隔が空いた方へ個別に連絡する、といった手当てです。

計算はリピート率・失客率の計算ツールで出せます。

15. 赤字で待てない場合の判断

原価上昇で利益が出ていない場合、回数の改善を待たずに値上げが必要なことがあります。判断材料を置いておきます。

まず、値上げしなかった場合に何が起きるかを数字にしてください。

確認する項目出し方
現在の月次の営業利益売上 −(材料費+人件費+家賃+その他)
損益分岐点の客数固定費 ÷(客単価 × 粗利率)
いまの客数との差現在の客数 − 損益分岐点の客数

差がマイナスなら、回数の改善を待つ余裕はありません。 その場合でも、「値上げの実務」の手順(閑散期・10%以内・事前告知・旧価格期間)は守ってください。手順を守るかどうかで失客の幅が変わります。

計算は売上計画シミュレーターで出せます。

16. 客層を変えるという選択

単価を上げるもうひとつの道が、来ていただくお客様の層を変えることです。

これは最も時間がかかり、最も難しい方法です。いま来ているお客様に値上げを受け入れてもらうのではなく、その価格で納得する方に入れ替わっていただくという選択だからです。

現実には、次のことが同時に起きます。

  • 既存のお客様の一部が離れる(離れる前提で計画する必要があります
  • 新しい層が来るまでに時間がかかる(半年〜1年)
  • その間、売上は落ちる

資金に余裕がないサロンが手を出す施策ではありません。 一方で、技術と提案に自信があり、いまの価格帯が合っていないと感じている場合には、正面から取り組む価値があります。

やるなら、入れ替えの期間の運転資金を先に確保してから始めてください。

17. やってはいけない5つのこと

① 既存のお客様にだけ値上げして、新規に割引を出す 新規限定クーポンを出しながら常連の価格を上げると、「長く通うほど損」という状態になります。ポータルサイトのクーポンと自店の価格表が食い違っていないか確認してください。

② 告知なしで当日会計時に伝える 最も失客につながります。金額の問題ではなく、扱われ方の問題として受け取られます。

③ メニュー名だけ変えて実質値上げする 「プレミアム」を付けて中身が同じ、といったやり方は気づかれます。信頼を一度失うと単価どころではなくなります。

④ 全員に同じオプションを毎回勧める 提案そのものが聞き流されるようになります。単価が上がらないだけでなく、必要な方にも届かなくなります。

⑤ 値上げ後に何も測らない 「なんとなく客足が落ちた気がする」では手を打てません。「値上げ後に必ず測ること」の項目だけは必ず記録してください。

18. 単価を上げる前のチェックリスト

上げてよい状態かを判断するためのものです。すべてに「はい」と答えられてから価格に手を付けてください。

確認項目なぜ必要か
新規と既存を分けて客単価を出しているか割引の影響を切り分けるため
平均来店間隔を測っているか値上げの影響を検知する土台
直近3か月のメニュー構成を把握しているか価格を変えずに動かせる余地の確認
メニュー別の時間あたり粗利を出しているかどのメニューを推すかの判断
既存のお客様へ事前に伝える手段があるか告知なしの値上げを避けるため
改定後に測る指標を決めているか手を打てる状態にするため
閑散期に実施できるか影響が出ても立て直せる

「既存のお客様へ事前に伝える手段があるか」で詰まるサロンが多いのが実情です。連絡先が分からないお客様には、価格改定のお知らせが届きません。ここが整っていない状態での値上げは、告知なしの値上げと同じ結果になります。

19. 仕組みで支えるなら

ここまでは、道具に関係なく成り立つ話です。紙の台帳と表計算ソフトでも実行できます。

そのうえで触れておくと、私たちが提供している「LIKE」は、LINE公式アカウントと予約・顧客管理をつないだサービスです。前回来店日をもとにご案内を出したり、価格改定のお知らせを既存のお客様にだけ届けたり、新規向けクーポンを常連の方に出さないよう分けたりできます。

ただし、仕組みを入れれば単価が上がるわけではありません。 何を測り、どの順で手を付けるかを決めているかが先です。この記事の「単価を上げる前のチェックリスト」を先に済ませてから検討してください。

詳細はLINE予約の機能ページをご覧ください。

20. よくある質問

客単価の平均はいくらですか。 1回あたりの単価は女性7,686円・男性4,853円というデータがあります(美容センサス2026年上期)。ただし立地・客層・メニュー構成で大きく変わるため、平均との比較にはあまり意味がありません。 自店の推移を追ってください。

単価と客数、どちらを先に上げるべきですか。 来店回数が先です。 単価を10%上げても年間の来店が1回減れば、値上げ前を下回ります(「単価を上げると、回数が減る」の計算をご覧ください)。

値上げの幅はどのくらいが適切ですか。 1回の改定は10%以内、次の改定まで1年以上空けるのが無難です。お客様が「高くなった」と感じるのは絶対額ではなく前回との差だからです。

値上げでどれくらい失客しますか。 一律の目安はありません。告知の有無・幅・客層で大きく変わります。だからこそ改定の3か月後・6か月後に来店間隔を測り、伸びていたら手当てするという進め方をおすすめします。

メニューを増やせば単価は上がりますか。 増やしすぎると逆効果です。選択肢が多いと決められなくなり、結果として一番分かりやすい単品が選ばれます。組み合わせを整理するほうが確実です。

店販だけで単価を上げられますか。 店販購入率は女性12.9%(同調査)なので、店販だけで大きく動かすのは難しいのが実情です。ただし粗利率が施術と違うため、利益への効き方は売上比率より大きくなります。

新規のお客様の単価が低いのは問題ですか。 初回は「近い・安い」で選ばれるため(同調査:女性の初回重視項目1位「自宅から近い」33.3%、2位「料金がリーズナブル」27.0%)、新規の単価が低いのは自然です。問題は2回目以降も低いままかどうかです。新規と既存を分けて見てください。

21. まとめ

  • 市場が縮んでいる原因は単価ではなく来店回数(単価+0.2%、回数−2.8%)
  • 値上げは効くが、実際に来店を減らしている(利用が減った理由の第2位が「料金改定」)
  • 年間売上=単価 × 来店回数。単価10%増でも回数が1回減れば値上げ前を下回る
  • だから順番は「回数 → 単価」。赤字で待てない場合だけ例外
  • 値上げの前に、メニュー構成・オプション・店販・指名の4つを試す
  • 値上げは閑散期・10%以内・事前告知・旧価格期間の明示
  • 成否は売上でなく来店間隔で判断する(3か月後・6か月後)
  • 最大の落とし穴は、既存のお客様に事前告知を届ける手段がないこと

単価は「上げる」ものではなく、上げても離れない状態を作ってから、結果として上がるものです。順番さえ守れば、値上げは怖い施策ではありません。

計算は売上計画シミュレーターリピート率・失客率 計算ツールをお使いください。

閑散期の空席をどう扱うかは美容室の閑散期・平日の空席を埋めるをご覧ください。

▶ 単価と来店回数はどちらも売上の要素です。回数のほうを動かす打ち手は美容室のリピート率を上げる方法にまとめています。

verified出典・参考

制度の内容は改定されることがあります。手続きの詳細・期限・手数料は所轄の窓口で最新の情報をご確認ください。 当編集部の考え方は編集方針に記載しています。

この記事について

LIKE編集部(株式会社SALON CONCIERGE)が執筆しています。 美容サロン向けにLINE連携の予約・顧客管理サービス「LIKE」を開発・運用しており、 サロンボードとの連携や予約の自動化を、実際にサロン様の現場で導入・運用してきた経験にもとづいて書いています。

構成は編集部で組み、下書きの作成には文章生成AIを利用しています。 数値と制度の記述は一次情報にあたって確認し、編集担当(山本)が内容を確認してから公開しています。

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