美容室の値上げの進め方|時期・幅・伝え方と、そのまま使える告知文面
値上げは実際に来店を減らしています(利用が減った理由の第2位が料金改定)。ただし進め方で幅が変わります。踏み切る前に確認する3点、閑散期という時期の選び方、1回10%以内という幅、既存のお客様への伝え方と告知文面、改定後に測る指標までまとめました。
薬剤も光熱費も上がり続けるなか、価格を据え置いたままでは利益が残らない——そう分かっていても、値上げに踏み切れないサロンは少なくありません。お客様が離れるのが怖いからです。
その不安は根拠のないものではありません。
美容サロンの利用が減った理由の第2位が「サロンの料金改定(値上げ)」でした。第1位は「美容代を節約する必要が出てきた」(女性40.8%・男性26.4%)です。 (出典:リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2026年上期」/2026年1月21日〜2月12日調査、全国・人口20万人以上の都市の15〜69歳、男女各6,600サンプル)
値上げは実際に来店を減らしています。 ただしこれは「値上げをするな」という意味ではありません。進め方で失客の幅が変わる、ということです。
この記事は、値上げの時期・幅・伝え方を、そのまま使える文面まで含めてまとめたものです。
1. 値上げの前に確認する3つ
踏み切る前に、これだけは確認してください。
① 価格を変えずに単価を上げる余地は使い切ったか
メニュー構成の見直し、オプション提案、店販、指名——価格に触らずに単価が動く方法があります。これらを試さずに値上げすると、使えたはずの手を残したまま失客のリスクだけ負うことになります。
詳しくは美容室の客単価を上げる方法にまとめました。
② いま本当に利益が出ていないのか
「なんとなく苦しい」ではなく、数字で確認してください。
| 出すもの | 計算 |
|---|---|
| 月の営業利益 | 売上 −(材料費+人件費+家賃+その他) |
| 損益分岐点の客数 | 固定費 ÷(客単価 × 粗利率) |
| 現在の客数との差 | 現在の客数 − 損益分岐点の客数 |
売上計画シミュレーターで出せます。差がプラスなら、値上げ以外の手を先に試す余地があります。
③ 既存のお客様に事前告知が届くか
ここで詰まるサロンが多いのが実情です。 連絡先が分からないお客様には、価格改定のお知らせが届きません。
告知が届かない状態での値上げは、当日の会計で初めて伝えることと同じになります。これが最も失客につながります。
2. いつ上げるか
| 時期 | 向き・不向き |
|---|---|
| 閑散期 | 最も向いています。 影響が出ても立て直す時間があります |
| 材料費の上昇直後 | 理由が説明しやすく、納得を得やすい |
| 移転・改装のとき | 提供するものが変わるので説明が通ります |
| 繁忙期の直前 | 避けてください。 直後に来店が集中し、印象が悪くなります |
| 年度替わり | 他の値上げと重なり「またか」と感じられやすい |
美容室の繁忙期は年末と3〜4月、ゴールデンウィーク前が一般的です。その直前は外してください。
3. いくら上げるか
1回の改定は10%以内が目安
お客様が「高くなった」と感じるのは、絶対額ではなく前回との差です。8,000円が8,800円になるのと、8,000円が10,000円になるのとでは、受け取られ方がまったく違います。
一度に大きく上げるより、幅を抑えて間隔を空けるほうが失客は少なくなります。次の改定まで最低1年は空けてください。
全メニューを一律に上げない
一律の値上げは分かりやすい反面、そのメニューを目当てに来ている方を直撃します。
| 上げやすいもの | 上げにくいもの |
|---|---|
| 材料費の上昇が大きいメニュー(カラー・パーマ) | 集客の入口になっているメニュー |
| 時間あたり粗利が低いメニュー | 常連の方が毎回選ぶメニュー |
| 追加・オプション系 | 単価がすでに高いメニュー |
理由が説明できるところから上げる——これが原則です。「材料費が上がったので、カラーの価格を改定します」は納得を得やすく、「全体的に上げます」は得にくい。
端数の置き方
7,800円を8,000円にするのと、8,200円にするのとでは、後者のほうが「上がった」と強く感じられます。大台をまたぐかどうかは意識してください。ただし、またがないために値上げ幅を削りすぎると、そもそもの目的を果たせません。
4. 誰に、どの順で伝えるか
順番を間違えると、常連のお客様から失います。
- 改定の1〜2か月前に、既存のお客様へ先に伝える(来店時に口頭で。そのうえで文面でも)
- 旧価格で受けられる期間を明示する(「◯月◯日のご来店分まで」)
- 新規のお客様には改定後の価格だけを出す(旧価格を見せない)
- 改定後しばらくは、理由を聞かれる前提で構える
スタッフへの共有が先
お客様に伝える前に、スタッフ全員が理由を説明できる状態にしてください。 「なぜ上がるんですか」と聞かれて「私も分からなくて」と答えられると、それだけで信頼が下がります。
共有すること:改定の理由/改定の対象と幅/旧価格の期限/よくある質問への答え方。
5. そのまま使える告知文面
基本形(掲示・LINE・DM共通)
【価格改定のお知らせ】 いつもご来店いただき、ありがとうございます。 かねてより薬剤・材料の価格上昇が続いており、これまで店内の工夫で対応してまいりましたが、施術の質を保つため、◯月◯日より一部メニューの価格を改定させていただくことになりました。 改定前の価格でのご予約は、◯月◯日のご来店分まで承ります。 引き続き、ご満足いただける仕上がりをお届けできるよう努めてまいります。
一部メニューのみ改定する場合
【一部メニューの価格改定について】 いつもありがとうございます。 カラー剤の仕入価格の上昇を受け、◯月◯日よりカラーメニューの価格を改定いたします。カット・トリートメントの価格は据え置きです。 ・カラー(ショート)8,000円 → 8,600円 ・カラー(ロング)11,000円 → 11,800円 改定前の価格は◯月◯日のご来店分まで適用いたします。
変更前と変更後を並べて書くのがこつです。隠すより、明示するほうが信頼されます。
来店時の口頭での伝え方
「実は◯月から、カラーのお値段を少し改定させていただくことになりまして。薬剤の仕入れがここ数年で上がっておりまして、質を落とさずに続けるためのご相談です。◯月◯日までは今の価格ですので、それまでのご予約でしたら今の金額で承ります。」
書き方の原則
| すること | しないこと |
|---|---|
| 理由を具体的に書く | 「諸般の事情により」で済ませる |
| これまで何をしてきたか書く | いきなり結論だけ伝える |
| 旧価格の期限を明記する | 期限を書かない |
| 変更前後の金額を並べる | 新価格だけ出す |
| 淡々と伝える | 過度に謝る |
謝りすぎないことが意外と大切です。何度も謝ると「悪いことをしている」という印象が強まり、かえってお客様を不安にさせます。
6. 改定後に測ること
値上げの成否は、売上ではなく来店間隔で判断します。改定直後は駆け込みの予約で売上が一時的に上がるため、そこで判断すると必ず読み違えます。
| 測る項目 | いつ | 見方 |
|---|---|---|
| 平均来店間隔 | 3か月後・6か月後 | 伸びていたら要注意 |
| 既存客の来店率 | 6か月後 | 改定前の同期間と比較 |
| 客単価(既存客のみ) | 毎月 | 新規と混ぜない |
| 1人あたり年間売上 | 12か月後 | これが最終判断 |
来店間隔が伸びていたら
値上げの影響は「辞める」ではなく「間隔を伸ばす」形で出ます。2か月ごとだった方が2か月半になる——失客としては見えないので、気づくのが遅れます。
伸びていたら、次の手当てをしてください。
- 次回のご案内を、これまでより早めに出す
- 間隔が空いた方へ個別に連絡する
- 間隔を空けない理由を伝える(カラーなら「根元が伸びると色が揃いにくくなります」など)
計算はリピート率・失客率 計算ツールで出せます。
7. 想定される質問への答え方
「なんで上がるんですか」
「薬剤の仕入れがこの数年で上がっておりまして。質を落として価格を維持する選択もあったのですが、仕上がりに関わるところなので、価格のほうをご相談させていただきました。」
「他の店はもっと安いですよ」
「そうですね、価格はお店によって違います。うちは◯◯を使っていて、その分のお値段になっています。ご負担が大きいようでしたら、◯◯のメニューでしたら近い仕上がりで抑えられます。」
否定せず、代替案を出すのが要点です。他店を悪く言うのは逆効果です。
「前から通ってるのに」
「長く来ていただいて本当にありがとうございます。だからこそ先にお伝えしたくて。◯月◯日までは今の価格で承りますので、それまでにご予約いただければ。」
長く通っていることへの感謝を先に述べてください。
8. やってはいけない4つのこと
① 告知なしで当日会計時に伝える 金額の問題ではなく、扱われ方の問題として受け取られます。最も失客につながります。
② メニュー名だけ変えて実質値上げする 「プレミアム」を付けて中身が同じ、といったやり方は気づかれます。信頼を失うと価格どころではなくなります。
③ 既存を上げながら新規に割引を出す 「長く通うほど損」という状態になります。ポータルサイトのクーポンと自店の価格表が食い違っていないか、必ず確認してください。
④ 改定後に何も測らない 「なんとなく客足が落ちた気がする」では手を打てません。「改定後に測ること」の4項目だけは記録してください。
9. 改定後、最初の来店で何を言うか
告知をしていても、改定後の最初の会計は空気が変わります。 ここでの一言が、その後の関係を左右します。
会計のときではなく、施術の最初に触れておくのが確実です。
「本日から新しい価格でのご案内になります。先日お伝えしたとおりなのですが、あらためて。本日はカラーとカットで◯◯円になります。」
会計で初めて金額を知る状況を作らないことが要点です。「聞いていた」と「今知った」では、同じ金額でも受け取り方が違います。
何も言われなかった場合
多くのお客様は何も言いません。それは納得しているという意味とは限らず、その場では言わずに来店間隔を伸ばすという形で反応することがあります。
だからこそ、反応の有無ではなく数字で追ってください。
スタッフが動揺している場合
値上げ直後は、スタッフのほうが気まずさを感じることがあります。「申し訳なさそうに伝える」と、お客様に不安が伝わります。
伝えるべきは謝罪ではなく事実です。理由を説明できる状態を作り、淡々と伝えられるようにしてください。ロールプレイを一度やっておくだけでも違います。
10. 仕組みで支えるなら
ここまでは道具に関係なく成り立つ話です。掲示と口頭でも実行できます。
そのうえで触れておくと、私たちが提供している「LIKE」では、LINE公式アカウントを通じて既存のお客様にだけ価格改定のお知らせを届けたり、新規向けクーポンを常連の方に出さないよう分けたりできます。改定後の来店間隔の変化も記録から追えます。
ただし、仕組みがあれば失客が防げるわけではありません。 時期・幅・伝え方を決めているかが先です。「値上げの前に確認する3つ」を確認してから検討してください。
詳細はLINE予約の機能ページをご覧ください。
11. まとめ
- 値上げは実際に来店を減らしている(利用が減った理由の第2位が「料金改定」)。ただし進め方で幅が変わる
- 上げる前に3つ確認:価格以外の余地・本当に利益が出ていないか・事前告知が届くか
- 時期は閑散期。繁忙期の直前は避ける
- 幅は1回10%以内、次の改定まで1年以上。一律ではなく理由が説明できるところから
- 順番は既存のお客様へ先に、旧価格の期限を明示して
- 文面は理由を具体的に・変更前後を並べて・謝りすぎない
- 成否は売上ではなく来店間隔で判断(3か月後・6か月後)
値上げそのものが失客を招くのではありません。知らないうちに上がっていたという体験が招きます。順番と伝え方さえ守れば、値上げは怖い施策ではありません。
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