開業・独立

美容室の開業初日から顧客台帳を作る|1人目のお客様を会員にする準備

開業して1年後に効くのは新規の数ではなく2回目の割合です。顧客台帳は開業初日の1人目から始めないと後から埋め合わせが効きません。開業前に決める4つのこと、初日からの運用、1人目のお客様への伝え方まで具体的にまとめました。

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美容室の開業初日から顧客台帳を作る|1人目のお客様を会員にする準備

「開業したら、まず新規を集めなければ」——独立を控えた方の多くが、そう考えて集客の準備に力を注ぎます。ポータルサイトの掲載プラン、割引クーポン、チラシ、SNS。どれも必要な準備です。

ただ、開業して1年、2年と続けていくときに効いてくるのは、新規を何人集めたかではなく、そのうち何人が2回目に来てくださったかのほうです。そして2回目を作るための土台である「お客様の記録」は、開業初日の1人目から始めないと、後から埋め合わせるのがとても難しいという性質を持っています。

この記事は、開業準備の最後の1か月にやっておくと後で効いてくる「顧客台帳の設計」について書いています。設備や資金の話ではありませんが、開業してから最初に効いてくる部分です。

1. 開業1年目に効くのは、新規の数ではなく「2回目」の割合

まず、市場がどう動いているかを数字で見ておきます。

指標数値前年比
美容室市場規模1兆3,063億円−5.9%
1回あたり単価(女性)7,686円+0.2%
年間利用回数(女性)4.18回−2.8%

(出典:リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2026年上期」)

読み取れることははっきりしています。単価は落ちていません。落ちているのは来店回数です。 市場が縮んでいる主な理由は、値下げ競争ではなく、お客様一人ひとりの来店間隔が伸びていることにあります。

もうひとつ、開業を考えるうえで直視しておきたい数字があります。

2025年の美容室の倒産は235件で、過去最多。2年連続の更新。そのうち設立10年未満が49.0%を占める。 (出典:帝国データバンク「美容室の倒産動向調査(2025年)」)

倒産の半数が設立10年未満です。開業して間もない時期は、来店回数が落ちている市場のなかで、まだお客様の層が薄い状態で走ることになります。ここで新規獲得だけに頼ると、毎月同じ人数を集め続けなければ売上が立たない構造になります。

「近いから」「安いから」で選ばれている、という前提に立つ

初めてサロンを選ぶとき、お客様が重視することの上位はこうなっています。

順位女性が初回来店時に重視すること割合
1位自宅から近い33.3%
2位料金がリーズナブル27.0%
3位料金が明確25.3%

(出典:同上)

初回は、技術やこだわりではなく、距離と価格で選ばれています。 これは腕の問題ではなく、来たことがない店の技術は判断のしようがないからです。

つまり、2回目に来ていただけるかどうかは、初回のあとに決まります。施術がよかったという記憶は残りますが、次に髪が伸びる2〜3か月後には、また「近い」「安い」で比べられる位置に戻ってしまいます。思い出していただくきっかけを、こちらから作れるかどうか。 顧客台帳が要るのはそのためです。

2. なぜ「1人目のお客様から」でないと間に合わないのか

顧客管理は「落ち着いてから始めよう」と後回しにされがちです。ところが、後から始めると次の3つが同時に起きます。

ひとつ目は、すでに来たお客様に、後から登録をお願いすることになる点です。 施術の最後に「実は今度から連絡先を登録していただきたくて」と切り出すのは、初回のご案内として自然に伝えるのとは難易度がまったく違います。会計の場面は、お客様が帰り支度をしている時間でもあります。

ふたつ目は、来店の記録が残っていないことです。 前回いつ来たか、何をしたかが分からないお客様には、次回のご案内を出しようがありません。「そろそろですね」と声をかけるには、前回の日付が必要です。開業から半年分の記録がなければ、その半年に来たお客様は、こちらから思い出していただくきっかけを作れません。

三つ目は、離れたことに気づけないことです。 記録がないと、失客は「気がついたら来なくなっていた」という形でしか分かりません。3か月来ていない方が何人いるのかを数えられなければ、手の打ちようがありません。

逆に、開業初日から記録していれば、これらはすべて自然に解決します。

開業と同時に始めた場合後から始めた場合
登録のご案内初回のご案内の一部として自然に伝えられる既に来た方へ改めてお願いすることになる
来店履歴1回目から積み上がる始めた日より前は空白のまま
失客の把握最初から数えられる記録のない期間は把握できない
お客様の負担初めての店の手続きとして受け入れられやすい「今さら何だろう」と感じられやすい

開業のタイミングは、お客様にとって「この店はこういうやり方なのだ」と受け止めてもらえる唯一の時期です。 途中から仕組みを変えると説明が要りますが、最初からそうであれば説明は要りません。

3. 開業前に決めておく4つのこと

難しい仕組みは要りません。開業前に、次の4つを紙に書いて決めておくだけで十分です。

(1) 何を記録するか

記録項目は、増やすほど続かなくなります。次回の施術に本当に効くものだけに絞ってください。最初はこのくらいで足ります。

  • 前回の施術内容(カラー剤の配合、パーマの種類、カット時の要望)
  • 前回の来店日
  • 次回のご提案(何か月後に、何をするとよいか)
  • 会話で出た予定(結婚式、転勤、出産など、来店間隔が変わる出来事)

迷ったら「これを見て次回の施術が変わるか」で判断してください。変わらない項目は書かなくて構いません。

(2) どうやって連絡を取るか

連絡手段が決まっていないと、記録があっても使えません。開業前に、ご案内の方法をひとつ決めておきます。電話、メール、LINE公式アカウント、はがき——どれでも構いませんが、お客様が読んでくださるかどうかで選んでください。

なお、予約の手段としては、いまもサロン検索・予約サイトが42.6%、LINEは7.0%(同調査、女性・複数回答)です。LINE予約の実際は美容室のLINE予約の始め方にまとめています。「LINEが主流」というわけではありません。ただ、こちらから連絡を出す用途としては、開封されやすさに差があります。

(3) いつ声をかけるか

「そろそろですね」とお伝えする時期を、施術ごとに決めておきます。

施術声をかける目安
カットのみ前回から1〜2か月
カラー(根元が気になる)前回から1〜1.5か月
パーマ前回から2〜3か月
縮毛矯正前回から3〜4か月

これは一般的な目安です。お客様の髪質と好みで前後しますので、カルテに「この方は◯週間」と書いておくほうが確実です。

(4) 誰が入力するか

一人サロンなら自分だけですが、スタッフを雇う場合は、いつ・誰が入力するかを決めておかないと必ず抜けます。「施術直後に担当者が入力する」「1日の終わりにまとめて」のどちらかに決め、開業初日から守ってください。

4. 開業初日から始める運用

決めたことを、初日からそのまま実行します。

  1. ご予約・ご来店のときに、連絡先の登録をご案内する。 「次回のご案内をお送りしてもよろしいですか」と一言添えるだけです。開業直後は説明の時間も取りやすい時期です。
  2. 施術のあとに記録する。 記憶が新しいうちに。あとでまとめて書くと、必ず薄くなります。
  3. 次回の目安をその場でお伝えする。 「◯月ごろにまたご覧になるとよいと思います」と口頭で伝え、同じ内容を記録に残します。
  4. 目安の時期が来たら、ご連絡する。 ここまでが一続きです。記録して終わりでは意味がありません。

1人目のお客様に、何と言うか

言い方に迷う方が多いところなので、そのまま使える形にしておきます。

「本日はありがとうございました。次にご覧になるのは◯月の中ごろがちょうどよいと思います。そのころに一度ご案内をお送りしてもよろしいでしょうか。ご不要でしたらいつでも止められます。」

大切なのは、登録をお願いするのではなく、次回のご提案とセットで伝えることです。お客様にとっての利点が先にあると、受け入れられやすくなります。「いつでも止められる」を添えるのも忘れないでください。

5. 何を数えるか

記録が貯まってきたら、次の2つだけ毎月見てください。

指標計算見方
新規リピート率2回目に来た人数 ÷ 新規の人数初回のあと、どれだけ戻ってきたか
失客率(昨年来た人数 − 今年も来た人数)÷ 昨年来た人数1年でどれだけ離れたか

他店の数値と比べる必要はありません。自店の推移が上がっているか下がっているかだけを見てください。毎月同じ方法で測り続けることのほうが、正確な水準を知ることより役に立ちます。

計算はリピート率・失客率 計算ツールでそのまま出せます。

6. よくある失敗と、その避け方

記録項目を増やしすぎる。 最初に張り切って20項目つくると、3か月で書かなくなります。4〜5項目から始めて、足りないと感じたときに足してください。

記録はしているが、連絡していない。 いちばん多い形です。記録は連絡するための手段なので、声をかける時期を決めていないと、ただの作業になります。

新規のご案内ばかり送る。 既にご来店いただいた方に初回限定の案内が届くと、かえって印象を損ねます。新規と既存で送り分けられる状態にしておいてください。

紙のカルテだけで運用する。 紙自体は悪くありません。ただ「前回から3か月経った方を抜き出す」ことができないため、こちらから声をかける用途には向きません。紙を使うなら、来店日だけは別途一覧にしておくことをおすすめします。

7. お客様の情報を預かる、ということ

顧客台帳は、お客様の氏名・連絡先・来店履歴という個人情報の集まりです。開業のタイミングで、扱い方も一緒に決めておいてください。あとから整えるより、最初に決めるほうが簡単です。

決めることは3つだけです。

何のために使うかを、お客様にお伝えする。 「次回のご案内をお送りするため」「施術の記録として残すため」と、目的を伝えたうえで登録していただきます。伝えていない目的には使いません。

見られる人の範囲を決める。 スタッフを雇う場合、誰がどこまで見られるかを決めます。紙のカルテなら保管場所と施錠、データなら端末とアカウントの管理です。共用のパソコンに置きっぱなしにしない、というだけでもかなり違います。

やめたいと言われたら止められるようにしておく。 配信の停止や登録の削除を求められたときに応じられる状態にしておきます。連絡の文面に「配信の停止はこちら」と一言添えておくのが確実です。

制度の考え方は個人情報保護委員会が公開しています。細かな要件よりも、「聞いていない使い方をしない」「求められたら止める」という基本を守ることのほうが実務では大切です。

8. 仕組みで支えるなら

ここまでは、道具に関係なく成り立つ話です。手書きの台帳でも、表計算ソフトでも実行できます。

そのうえで、開業のタイミングで仕組みを入れる場合の考え方だけ触れておきます。私たちが提供している「LIKE」は、LINE公式アカウントと予約・顧客管理をつないだサービスです。開業と同時に導入すると、1人目のお客様から会員として記録が残り、前回来店日をもとにご案内を出すところまでが一続きになります。初期費用はかからず、月額制で契約期間の縛りもありません。

ただし、仕組みを入れれば再来が増えるわけではありません。 何を記録し、いつ声をかけるかを決めているかどうかが先です。決めていないまま道具だけ入れても、入力されないデータが貯まるだけです。この記事の3章を先に済ませてから検討してください。

サービスの詳細はLINE予約の機能ページをご覧ください。

9. まとめ

  • 市場が縮んでいる主因は単価ではなく来店回数。新規獲得だけに頼る形は苦しくなる
  • 倒産の49.0%が設立10年未満。開業初期こそ再来の土台づくりが要る
  • 初回は「近い・安い」で選ばれる。2回目は、こちらから思い出していただけるかで決まる
  • 顧客台帳は開業初日の1人目から。後から始めると、登録のお願い・履歴の空白・失客の見落としが同時に起きる
  • 開業前に決めるのは4つだけ。何を記録するか/どう連絡するか/いつ声をかけるか/誰が入力するか
  • 毎月見るのは新規リピート率と失客率の2つ
  • 個人情報は「聞いていない使い方をしない」「求められたら止める」を最初に決めておく

開業準備の中では地味な項目ですが、開業してから最初に効いてくる部分です。物件と内装が決まったころに、一度手を止めて決めておくことをおすすめします。

準備の全体像は美容室開業の完全ガイド、開店日からの逆算は開業スケジュール逆算ツールをご利用ください。

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verified出典・参考

制度の内容は改定されることがあります。手続きの詳細・期限・手数料は所轄の窓口で最新の情報をご確認ください。 当編集部の考え方は編集方針に記載しています。

この記事について

LIKE編集部(株式会社SALON CONCIERGE)が執筆しています。 美容サロン向けにLINE連携の予約・顧客管理サービス「LIKE」を開発・運用しており、 サロンボードとの連携や予約の自動化を、実際にサロン様の現場で導入・運用してきた経験にもとづいて書いています。

記事の内容は掲載時点の情報です。仕様や料金は各サービスの公式情報をあわせてご確認ください。 何を根拠に書き、どの分野は専門家にご確認いただきたいかは編集方針に記載しています。 運営会社について

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