サロンアプリ

美容室でアプリを導入するデメリット7つ|サロンで効かなくなる理由

インストールの壁、年4回しかない想起機会、解約で消えるインストール数。導入後に表面化する問題を、時期ごとに先にお伝えします。

読了 約10分
美容室でアプリを導入するデメリット7つ|サロンで効かなくなる理由

店舗アプリの紹介記事は、メリットから書き始めるものがほとんどです。この記事は逆から書きます。導入した後に「思っていたのと違う」となる箇所を、先に全部お伝えします。

デメリットを知ったうえで導入すれば、対策を用意できます。知らずに導入すると、費用だけが残ります。

なお、この記事はアプリを否定するためのものではありません。条件が合う店では有効な手段です。向いている業態の一覧は美容室に自社アプリは必要かにまとめています。


1. 前提:まず数字を3つ

デメリットの根拠になる調査の数字を、先に置きます。

数値出典
お客様が入れている店舗公式アプリは平均5.0個MMD研究所「店舗公式アプリに関する利用実態調査」(2024年7月/本調査n=567)
インストールしなかった理由の1位は「利用頻度が低そう」50.7%MMD研究所「店舗公式アプリ利用に関する意識調査」(同)
アプリを思い出すきっかけの1位は「店員の声掛け」23.3%同上

この3つが、以下のデメリットすべての背景にあります。


2. デメリット①:インストールしてもらう壁が高い

最も大きな問題です。お客様に、ストアを開き、検索し、インストールし、会員登録をしていただくという4段階を通っていただく必要があります。

美容室の会計は、次のご予約の相談や物販の案内と重なる、限られた時間です。そこにこの4段階を差し込むと、1人あたり2〜3分かかります。

起きること

  • 会計が混み合う時間帯には、案内を飛ばすようになる
  • 案内するスタッフとしないスタッフで、差が出る
  • 「あとで入れますね」と言われて、そのまま入らない

対策

  • 会計時ではなく、施術中の待ち時間(カラーの放置時間など)に案内する
  • QRコードをお客様の目の高さに常設し、口頭説明を短くする
  • 「インストール率=案内した人のうち入れた人の割合」を毎月出し、スタッフ間の差を見る

3. デメリット②:来店頻度が低いと、開かれずに終わる

インストールしていただいても、開いていただけなければ効果はありません。

MMDの調査で、アプリの利用を思い出すきっかけの上位3つは「店員の声掛け(23.3%)」「店内ポスター・チラシ(18.1%)」「レジ周辺のPOP(17.2%)」で、すべて店内での接触でした。

美容室のご来店は年4回台です(ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス」)。つまり、思い出していただく機会が年4回しかありません。

起きること

  • インストール数は増えるのに、起動数が増えない
  • 2〜3か月空くうちに、アイコンの場所を忘れられる
  • ポイントを貯めても、貯まる速度が遅く、貯める動機が続かない

対策

  • 来店と来店の間に、アプリの外から思い出していただく導線を作る(LINE、メールなど)
  • ポイントの有効期限を、来店サイクルより十分長く設定する
  • 「30日後起動率」をKPIにする(ダウンロード率を上げる方法

4. デメリット③:プッシュ通知は、思ったほど届かない

アプリの最大の武器とされるプッシュ通知には、3つの関門があります。

関門内容
①インストールしているしていなければ届きません
通知を許可しているiOSもAndroidも、許可が必要です
③削除していない削除されれば届きません

この3つを掛け算した人数が、実際に届く人数です。「アプリなら全員に届く」ということはありません。

さらに、MMDの調査では入れなかった理由の3位が「通知が煩わしそう」(18.0%)でした。通知を増やすと、削除の理由にもなります。

対策

  • インストール直後に通知許諾を求めない。ポイント付与など、通知が役立つ場面の直前に求める
  • 配信頻度を決めて守る(週1回など)
  • 通知許諾率をKPIとして毎月見る

5. デメリット④:費用が止まらない

初期費用は一度ですが、月額とストア維持費は、使っていなくても発生し続けます。

費目性質
月額利用料使わなくても毎月発生
Apple Developer Program(自店名義の場合)年99米ドル。止めるとアプリがストアから消える
OS更新への対応数年に一度、まとまった費用
店頭案内の人件費案内をやめると効果も止まる

月2万円なら3年で72万円、ストア維持費と改修費を含めると90万円前後になります。単価7,668円で換算すると約119人分です。

詳しい内訳は美容室のアプリ制作・維持費用の全体像にまとめました。


6. デメリット⑤:解約すると、積み上げが消える

これが最も見落とされる論点です。

サロン向けアプリの多くは、提供会社の開発者アカウントの配下で公開されます。Appleの法人登録には法人格とD-U-N-S番号、組織ドメインのメールアドレス、機能しているWebサイトが必要で、個人事業では屋号での登録ができないためです(Apple公式)。

この形の場合、解約するとこうなります。

解約後
アプリストアから消えます
インストールしていただいた数ゼロに戻ります
プッシュ通知の到達先失われます
貯まったポイント提供会社の仕様によります
顧客データCSV出力できるかどうかが分かれ目

契約前に確認する質問は2つです。

  1. このアプリは、どちらの開発者アカウントで公開されますか
  2. 顧客データはCSVで出力できますか。項目は何ですか

移行の手順はサロンアプリをやめる・乗り換えるときの顧客データ移行にまとめています。


7. デメリット⑥:スタッフの運用負担が続く

アプリは「入れて終わり」になりません。毎月、中身を作る人が要ります。

  • 配信内容の作成(月2〜4回)
  • クーポン・ポイント施策の設定
  • 新規スタッフへの案内方法の教育
  • お客様からの操作の問い合わせ対応

小規模なサロンでは、この作業がオーナー1人に集中します。繁忙期に止まり、止まったまま再開されないというのが、よくある経過です。

対策

  • 配信を月1回・固定の曜日に絞って、続く形にする
  • 案内の文言を紙1枚に固定し、誰でも同じ案内ができるようにする
  • やらないことを決める(毎月のキャンペーン企画は作らない、など)

8. デメリット⑦:既存の予約台帳と二重管理になる

予約ポータルサイトを併用している場合、予約が2か所に入る状態が生まれます。

起きること

  • ダブルブッキング
  • 空き枠の反映漏れ
  • 顧客情報が2つの台帳に分かれ、履歴が追えなくなる

これは現場が最も嫌う問題で、運用が止まる直接の原因になります。

対策


9. デメリットを引き受けてでも導入する価値がある場合

公平のために書きます。次の条件がそろう店では、ここまでのデメリットは十分に回収できます。

  1. 来店サイクルが月1回前後(まつげ、ネイル、眉、ヘッドスパなど)
  2. 稼働顧客が1,000人以上
  3. 多店舗展開していて、共通の会員証・ポイントに意味がある
  4. 物販・ECの比率が高く、アプリを開く理由が毎月ある
  5. 店頭の案内が仕組みになっている

カット中心の美容室で、来店が年4回、顧客数が300人未満——この条件では、上記のデメリットが費用を上回りやすくなります。


9-1. デメリットが表面化する時期

導入直後は問題が見えません。いつ、何が起きやすいかを時系列で並べます。

時期起きやすいこと先に打てる手
1〜3か月案内に慣れず、インストール率が伸びない案内トークを紙1枚に固定し、全スタッフで統一する
3〜6か月案内が担当者任せになり、案内率が落ちるスタッフ別のインストール率を毎月共有する
6〜12か月起動率が落ちる。ポイントが貯まらず動機が消える開く理由を毎月1つ用意する。ポイントの有効期限を来店サイクルより長くする
12か月〜配信の中身を作る人がいなくなり、運用が止まる月1回・固定曜日に絞って、続く形に落とす
更新のたびOS更新への対応費が発生する契約時に、月額に含まれるかを書面で確認する

6〜12か月目が最初の分岐点です。ここで起動率が1割を切ったまま推移する場合、その後に自然回復することはほとんどありません。

9-2. 導入前の30秒チェック

次の質問に「はい」がいくつあるかで、リスクの大きさが分かります。

  1. 自店の年間平均来店回数は6回以上ですか
  2. 稼働している顧客は1,000人以上いますか
  3. 全スタッフが、毎回同じ案内をできる体制がありますか
  4. アプリに載せる中身を、毎月作る担当者がいますか
  5. 3年間の総額(月2万円なら約90万円)を先に見て、納得できますか
  6. 既存の予約台帳と連携できることを確認済みですか
  7. 顧客データをCSVで出力できることを確認済みですか

「はい」が5つ未満であれば、導入は待ったほうが安全です。足りない項目を先に埋めるほうが、結果的に費用対効果が上がります。

10. よくある質問(FAQ)

Q1. 店舗アプリのデメリットは何ですか。 A. 主なものは7つです。インストールしていただく壁が高いこと、来店頻度が低いと開かれないこと、プッシュ通知が全員には届かないこと、月額とストア維持費が止まらないこと、解約するとインストール数が消えること、運用にスタッフの時間が継続的にかかること、既存の予約台帳と二重管理になりやすいことです。

Q2. アプリを入れてもダウンロードされません。なぜですか。 A. 案内できていないか、来店頻度に対して動機が弱いかのどちらかです。まず「案内した来店客数のうち、インストールした人の割合」を出してください。店舗アプリを思い出すきっかけの1位は「店員の声掛け」(23.3%)で、上位3つはすべて店内での接触です。案内が担当者任せになっていないかを確認するのが最初の一手です。

Q3. アプリをやめたいのですが、お客様への影響はありますか。 A. ポイントが貯まっている場合、その扱いを事前に決めて告知する必要があります。また、アプリが提供会社の名義で公開されている場合、解約と同時にストアから消えます。お客様への連絡手段が他にあるか(LINE、メール、電話)を先に確認し、移行の告知をしてから解約してください。

Q4. 通知が届いていないようです。 A. 通知許諾率を確認してください。インストールしただけでは通知は届かず、お客様が端末側で通知を許可している必要があります。インストール直後に許諾を求めると拒否されやすいため、ポイント付与など通知が役に立つ場面の直前に求める設計に変えると改善することがあります。

Q5. デメリットを避けてアプリのような使い方をする方法はありますか。 A. LINEミニアプリという選択肢があります。LINEの中で動くため、お客様のインストールが不要で、ストア維持費もかかりません。会員証やポイント履歴など、お客様が自分で操作する画面を置くのに向いています。ホーム画面にアイコンを置きたい、という目的以外は、多くの場合こちらで代替できます。

verified出典・参考

制度の内容は改定されることがあります。手続きの詳細・期限・手数料は所轄の窓口で最新の情報をご確認ください。 当編集部の考え方は編集方針に記載しています。

この記事について

LIKE編集部(株式会社SALON CONCIERGE)が執筆しています。 美容サロン向けにLINE連携の予約・顧客管理サービス「LIKE」を開発・運用しており、 サロンボードとの連携や予約の自動化を、実際にサロン様の現場で導入・運用してきた経験にもとづいて書いています。

記事の内容は掲載時点の情報です。仕様や料金は各サービスの公式情報をあわせてご確認ください。 何を根拠に書き、どの分野は専門家にご確認いただきたいかは編集方針に記載しています。 運営会社について

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