美容室の利益率の出し方|営業利益率の計算手順と、いま効く改善の順番
「美容室の平均利益率は◯%」という答えは、あまり役に立ちません。自店の営業利益率を比べられる形で出す手順と、いま効く改善の順番を、公表統計と合わせて整理します。
「うちの美容室は、儲かっているほうなのか」。決算書を見ても、同業と比べてどうなのかが分からない、という声をよくいただきます。この記事では、美容室の利益率を自店の数字で計算する手順と、公的統計・業界調査から分かる市場の前提を整理します。
最初にお伝えしておくと、「美容室の平均利益率は◯%です」という一行の答えは、あまり役に立ちません。個人店と10人規模の店では構造がまったく違いますし、オーナーの役員報酬をどう扱うかで数字が数倍変わるためです。大事なのは、自店の数字を、比べられる形に直すことです。
1. 利益率には3種類ある
「利益率」と一口にいっても、見ている場所が違います。まずここを分けます。
| 名称 | 計算式 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| 粗利率(売上総利益率) | (売上 − 材料費) ÷ 売上 | 施術1回あたり、材料を引いていくら残るか |
| 営業利益率 | 営業利益 ÷ 売上 | 家賃・人件費・水道光熱費まで引いて、本業で残るか |
| 経常利益率 | 経常利益 ÷ 売上 | 借入の利息まで引いて、最終的に残るか |
美容室は材料費の比率が低い業種なので、粗利率は高く出ます。粗利率が高いことに安心してはいけません。美容室の損益を決めているのは、材料費ではなく人件費と家賃です。したがって、経営判断に使うのは営業利益率です。
オーナーの人件費を入れないと比較できない
個人事業のサロン様で最も多い計算間違いが、オーナー自身の労働に対する報酬を費用に入れていないことです。オーナーが月に200時間働いているなら、その分の人件費は本来かかっています。
これを入れずに計算した営業利益率は、他店とも、法人化した場合とも比較できません。オーナーの想定報酬(同じ働きをスタッフに任せたら払う額)を費用に計上してから計算してください。ここを直すだけで、「黒字だと思っていたが実質赤字だった」と分かることがあります。
2. 自店の営業利益率を出す手順
手順1:直近12か月の売上を3つに分ける
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 技術売上 | カット・カラー・パーマ・トリートメントなど |
| 店販売上 | シャンプー・トリートメントなどの商品販売 |
| その他 | 着付け、物販以外のサービスなど |
12か月で見るのは、季節変動をならすためです。3月・12月は繁忙、1月・8月は閑散になりやすく、1か月だけでは判断を誤ります。
手順2:費用を固定費と変動費に分ける
| 区分 | 主な項目 |
|---|---|
| 変動費 | 材料費、店販の仕入、媒体の送客手数料、決済手数料 |
| 固定費 | 家賃、人件費(オーナー分を含む)、水道光熱費、媒体の掲載料、システム利用料、リース料 |
ここで媒体費を掲載料と送客手数料に分けるのがポイントです。掲載料は毎月固定でかかり、送客手数料は予約が入るたびに発生します。性質が違うので、まとめて「広告費」にすると打ち手が見えなくなります。
手順3:計算する
営業利益 = 売上 −(変動費 + 固定費) 営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上 × 100
この数字を、12か月分と、直近3か月分の両方で出してください。差があれば、直近で何かが変わっています。
3. 市場の前提:単価ではなく回数が落ちている
自店の数字が出たら、次は市場の動きと突き合わせます。ここは公表されている調査で確認できます。
リクルート ホットペッパービューティーアカデミーの「美容センサス2026年上期」によると、2026年の美容室市場は1兆3,063億円・前年比マイナス5.9%でした。
重要なのは、その中身です。
| 指標 | 女性 | 男性 |
|---|---|---|
| 1回あたり利用金額 | 7,686円(前年比+0.2%) | 4,853円(前年比−0.5%) |
| 年間利用回数 | 4.18回(前年比−2.8%) | 5.05回(前年比−3.6%) |
出典:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2026年上期 美容室編」(調査期間 2026年1月21日〜2月12日/全国・人口20万人以上の都市に居住する15〜69歳/男女各6,600サンプル)
単価はほぼ横ばいで、来店回数が減っています。市場が縮んでいる主因は値下げではなく、来店間隔が伸びたことです。同調査では、美容サロンの利用が減った理由の1位が「美容代を節約する必要が出てきたため」(女性40.8%・男性26.4%)、2位が「サロンの料金改定(値上げ)のため」でした。
この前提が、利益率の改善策の優先順位を決めます。
4. 利益率を上げる4つの方法と、いまの優先順位
営業利益率を上げる方法は、原理的には4つしかありません。
① 単価を上げる
いちばん効きますが、いまは注意が必要です。上の調査で、利用が減った理由の2位が「料金改定(値上げ)」でした。節約意識が高まっている局面での一律値上げは、来店回数の減少を招きやすいということです。
やるなら、全体の値上げではなく、メニューの組み替え(トリートメントの選択肢を増やす、指名料の設計を見直す)から検討するほうが安全です。
② 来店回数を戻す
いま最も効きやすいのがここです。市場全体で回数が落ちているということは、自店の既存客も来店間隔が伸びている可能性が高いためです。
年4.18回のお客様が3.5回に落ちると、単価7,686円なら年間5,200円の減収です。100人で52万円、300人で156万円。値上げをせずに、この落ちた分を戻すほうが、抵抗が少なく額も大きくなります。
具体的には、前回来店からの経過日数でお客様を並べ、通常の来店周期を過ぎた方に個別にご連絡する、という運用です。詳しくは美容室の失客対策 完全ガイドにまとめています。
③ 新規獲得コストを下げる
新規1人あたりにいくら払っているかを出します。
新規1人あたりコスト =(掲載料 + 送客手数料 + 広告費)÷ 新規来店人数
この数字と、新規のお客様の初回粗利を比べてください。初回で回収できていない場合、2回目以降の再来があって初めて黒字になります。つまり、新規獲得コストの問題は、再来率の問題とセットです。計算の手順はホットペッパービューティーの費用で詳しく扱っています。
なお、すでに常連になっているお客様が毎回媒体から予約している場合、そのたびに送客手数料が発生している可能性があります。ここは点検する価値があります。
④ 店販を伸ばす
店販は在庫リスクがある一方、施術時間を増やさずに売上を足せます。ただし過度な期待は禁物です。同調査では、女性の過去1年の店販購入率は12.9%(前年比1.5ポイント減)でした。購入者の年間購入総額は平均1万2,445円です。
計算式と改善のKPIは美容室の店販比率と利益率にまとめています。
5. 廃業が増えている背景
判断の材料として、業界全体の状況も見ておきます。
帝国データバンクの調査によると、2025年の美容室の倒産は235件で過去最多、2年連続で最多を更新しました(負債1,000万円以上・法的整理が対象)。特徴的なのは中身です。
- 設立10年未満が49.0%(過去最高)
- 平均業歴13.0年(前年14.1年から短縮)
- 資本金1,000万円未満が9割超
一方で、厚生労働省「衛生行政報告例」(令和6年度)によると、美容所の数は277,752施設で前年比+1.3%と増え続けています。
店は増え、市場は縮み、廃業が最多。競争条件は明確に厳しくなっています。この中で利益率を守るには、新規の取り合いよりも、いま来ているお客様の来店回数を落とさないことのほうが、費用対効果が高くなります。
6. まず出すべき3つの数字
長くなりましたので、最後に絞ります。この3つを出してください。
- 営業利益率(オーナーの人件費を入れて計算したもの)
- 既存客の平均来店間隔(前回来店日からの経過日数の中央値)
- 新規1人あたりコスト(媒体費 ÷ 新規来店人数)
1が薄いとき、たいてい2が伸びているか、3が高すぎるかのどちらかです。どちらが原因かで打ち手がまったく変わりますので、値上げを考える前に、この2つを先に確認することをおすすめします。
よくある質問
Q1. 美容室の営業利益率の平均はどれくらいですか。 A. 規模・立地・法人か個人か・オーナー報酬の扱いによって大きく変わるため、一つの平均値を目安にすることはおすすめしていません。公表統計でも、美容業は事業規模の幅が非常に大きい業種です。他店と比べるより、自店の営業利益率を12か月と直近3か月で出し、その推移を見るほうが判断に使えます。
Q2. 粗利率と営業利益率のどちらを見るべきですか。 A. 経営判断には営業利益率です。美容室は材料費の比率が低いため粗利率は高く出ますが、損益を決めているのは人件費と家賃だからです。粗利率は、メニューごとの収益性を比べるときに使ってください。
Q3. 値上げをすべきでしょうか。 A. 一律の値上げは慎重に判断してください。美容センサス2026年上期では、美容サロンの利用が減った理由の2位が「サロンの料金改定(値上げ)のため」でした。まず来店回数の変化を確認し、回数が落ちているなら、そちらを戻すほうが先です。
Q4. 来店回数はどうやって測ればいいですか。 A. お客様ごとに「前回来店日からの経過日数」を出し、その中央値を見ます。平均ではなく中央値を使うのは、何年も来ていない方に引っ張られないためです。通常の来店周期(カラーであれば6〜8週間など)を大きく超えている方が、離反しかけているお客様です。
Q5. 店販を伸ばせば利益率は改善しますか。 A. 施術時間を増やさずに売上を足せる点は有効です。ただし女性の店販購入率は12.9%(美容センサス2026年上期)で、前年から1.5ポイント下がっています。店販だけで利益構造を変えるのは難しく、来店回数の維持と組み合わせて考えるのが現実的です。
まとめ
- 利益率は粗利率ではなく営業利益率で見る。オーナーの人件費を必ず費用に入れる
- 市場は単価ではなく来店回数が落ちて縮んでいる(女性 年4.18回・前年比−2.8%/単価は+0.2%)
- 値上げは、節約意識が高まっている局面では回数減を招きやすい。先に来店回数を確認する
- 新規獲得コストは、再来率とセットで判断する
- 店は増え、市場は縮み、倒産は過去最多。競争条件は厳しくなっている
出典
- 株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2026年上期 美容室編」(2026年6月25日発表)
- 株式会社帝国データバンク「『美容室』の倒産動向(2025年)」
- 厚生労働省「衛生行政報告例」令和6年度
この記事について
LIKE編集部(株式会社SALON CONCIERGE)が執筆しています。 美容サロン向けにLINE連携の予約・顧客管理サービス「LIKE」を開発・運用しており、 サロンボードとの連携や予約の自動化を、実際にサロン様の現場で導入・運用してきた経験にもとづいて書いています。
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