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美容室の利益率の出し方|営業利益率の計算手順と、いま効く改善の順番

「美容室の平均利益率は◯%」という答えは、あまり役に立ちません。自店の営業利益率を比べられる形で出す手順と、いま効く改善の順番を、公表統計と合わせて整理します。

LLIKE編集部 読了 約9分
美容室の利益率の出し方|営業利益率の計算手順と、いま効く改善の順番

「うちの美容室は、儲かっているほうなのか」。決算書を見ても、同業と比べてどうなのかが分からない、という声をよくいただきます。この記事では、美容室の利益率を自店の数字で計算する手順と、公的統計・業界調査から分かる市場の前提を整理します。

最初にお伝えしておくと、「美容室の平均利益率は◯%です」という一行の答えは、あまり役に立ちません。個人店と10人規模の店では構造がまったく違いますし、オーナーの役員報酬をどう扱うかで数字が数倍変わるためです。大事なのは、自店の数字を、比べられる形に直すことです。

1. 利益率には3種類ある

「利益率」と一口にいっても、見ている場所が違います。まずここを分けます。

名称計算式何が分かるか
粗利率(売上総利益率)(売上 − 材料費) ÷ 売上施術1回あたり、材料を引いていくら残るか
営業利益率営業利益 ÷ 売上家賃・人件費・水道光熱費まで引いて、本業で残るか
経常利益率経常利益 ÷ 売上借入の利息まで引いて、最終的に残るか

美容室は材料費の比率が低い業種なので、粗利率は高く出ます。粗利率が高いことに安心してはいけません。美容室の損益を決めているのは、材料費ではなく人件費と家賃です。したがって、経営判断に使うのは営業利益率です。

オーナーの人件費を入れないと比較できない

個人事業のサロン様で最も多い計算間違いが、オーナー自身の労働に対する報酬を費用に入れていないことです。オーナーが月に200時間働いているなら、その分の人件費は本来かかっています。

これを入れずに計算した営業利益率は、他店とも、法人化した場合とも比較できません。オーナーの想定報酬(同じ働きをスタッフに任せたら払う額)を費用に計上してから計算してください。ここを直すだけで、「黒字だと思っていたが実質赤字だった」と分かることがあります。

2. 自店の営業利益率を出す手順

手順1:直近12か月の売上を3つに分ける

区分内容
技術売上カット・カラー・パーマ・トリートメントなど
店販売上シャンプー・トリートメントなどの商品販売
その他着付け、物販以外のサービスなど

12か月で見るのは、季節変動をならすためです。3月・12月は繁忙、1月・8月は閑散になりやすく、1か月だけでは判断を誤ります。

手順2:費用を固定費と変動費に分ける

区分主な項目
変動費材料費、店販の仕入、媒体の送客手数料、決済手数料
固定費家賃、人件費(オーナー分を含む)、水道光熱費、媒体の掲載料、システム利用料、リース料

ここで媒体費を掲載料と送客手数料に分けるのがポイントです。掲載料は毎月固定でかかり、送客手数料は予約が入るたびに発生します。性質が違うので、まとめて「広告費」にすると打ち手が見えなくなります。

手順3:計算する

営業利益 = 売上 −(変動費 + 固定費) 営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上 × 100

この数字を、12か月分と、直近3か月分の両方で出してください。差があれば、直近で何かが変わっています。

3. 市場の前提:単価ではなく回数が落ちている

自店の数字が出たら、次は市場の動きと突き合わせます。ここは公表されている調査で確認できます。

リクルート ホットペッパービューティーアカデミーの「美容センサス2026年上期」によると、2026年の美容室市場は1兆3,063億円・前年比マイナス5.9%でした。

重要なのは、その中身です。

指標女性男性
1回あたり利用金額7,686円(前年比+0.2%)4,853円(前年比−0.5%)
年間利用回数4.18回(前年比−2.8%)5.05回(前年比−3.6%)

出典:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2026年上期 美容室編」(調査期間 2026年1月21日〜2月12日/全国・人口20万人以上の都市に居住する15〜69歳/男女各6,600サンプル)

単価はほぼ横ばいで、来店回数が減っています。市場が縮んでいる主因は値下げではなく、来店間隔が伸びたことです。同調査では、美容サロンの利用が減った理由の1位が「美容代を節約する必要が出てきたため」(女性40.8%・男性26.4%)、2位が「サロンの料金改定(値上げ)のため」でした。

この前提が、利益率の改善策の優先順位を決めます。

4. 利益率を上げる4つの方法と、いまの優先順位

営業利益率を上げる方法は、原理的には4つしかありません。

① 単価を上げる

いちばん効きますが、いまは注意が必要です。上の調査で、利用が減った理由の2位が「料金改定(値上げ)」でした。節約意識が高まっている局面での一律値上げは、来店回数の減少を招きやすいということです。

やるなら、全体の値上げではなく、メニューの組み替え(トリートメントの選択肢を増やす、指名料の設計を見直す)から検討するほうが安全です。

② 来店回数を戻す

いま最も効きやすいのがここです。市場全体で回数が落ちているということは、自店の既存客も来店間隔が伸びている可能性が高いためです。

年4.18回のお客様が3.5回に落ちると、単価7,686円なら年間5,200円の減収です。100人で52万円、300人で156万円。値上げをせずに、この落ちた分を戻すほうが、抵抗が少なく額も大きくなります。

具体的には、前回来店からの経過日数でお客様を並べ、通常の来店周期を過ぎた方に個別にご連絡する、という運用です。詳しくは美容室の失客対策 完全ガイドにまとめています。

③ 新規獲得コストを下げる

新規1人あたりにいくら払っているかを出します。

新規1人あたりコスト =(掲載料 + 送客手数料 + 広告費)÷ 新規来店人数

この数字と、新規のお客様の初回粗利を比べてください。初回で回収できていない場合、2回目以降の再来があって初めて黒字になります。つまり、新規獲得コストの問題は、再来率の問題とセットです。計算の手順はホットペッパービューティーの費用で詳しく扱っています。

なお、すでに常連になっているお客様が毎回媒体から予約している場合、そのたびに送客手数料が発生している可能性があります。ここは点検する価値があります。

④ 店販を伸ばす

店販は在庫リスクがある一方、施術時間を増やさずに売上を足せます。ただし過度な期待は禁物です。同調査では、女性の過去1年の店販購入率は12.9%(前年比1.5ポイント減)でした。購入者の年間購入総額は平均1万2,445円です。

計算式と改善のKPIは美容室の店販比率と利益率にまとめています。

5. 廃業が増えている背景

判断の材料として、業界全体の状況も見ておきます。

帝国データバンクの調査によると、2025年の美容室の倒産は235件で過去最多、2年連続で最多を更新しました(負債1,000万円以上・法的整理が対象)。特徴的なのは中身です。

  • 設立10年未満が49.0%(過去最高)
  • 平均業歴13.0年(前年14.1年から短縮)
  • 資本金1,000万円未満が9割超

一方で、厚生労働省「衛生行政報告例」(令和6年度)によると、美容所の数は277,752施設で前年比+1.3%と増え続けています。

店は増え、市場は縮み、廃業が最多。競争条件は明確に厳しくなっています。この中で利益率を守るには、新規の取り合いよりも、いま来ているお客様の来店回数を落とさないことのほうが、費用対効果が高くなります。

6. まず出すべき3つの数字

長くなりましたので、最後に絞ります。この3つを出してください。

  1. 営業利益率(オーナーの人件費を入れて計算したもの)
  2. 既存客の平均来店間隔(前回来店日からの経過日数の中央値)
  3. 新規1人あたりコスト(媒体費 ÷ 新規来店人数)

1が薄いとき、たいてい2が伸びているか、3が高すぎるかのどちらかです。どちらが原因かで打ち手がまったく変わりますので、値上げを考える前に、この2つを先に確認することをおすすめします。

よくある質問

Q1. 美容室の営業利益率の平均はどれくらいですか。 A. 規模・立地・法人か個人か・オーナー報酬の扱いによって大きく変わるため、一つの平均値を目安にすることはおすすめしていません。公表統計でも、美容業は事業規模の幅が非常に大きい業種です。他店と比べるより、自店の営業利益率を12か月と直近3か月で出し、その推移を見るほうが判断に使えます。

Q2. 粗利率と営業利益率のどちらを見るべきですか。 A. 経営判断には営業利益率です。美容室は材料費の比率が低いため粗利率は高く出ますが、損益を決めているのは人件費と家賃だからです。粗利率は、メニューごとの収益性を比べるときに使ってください。

Q3. 値上げをすべきでしょうか。 A. 一律の値上げは慎重に判断してください。美容センサス2026年上期では、美容サロンの利用が減った理由の2位が「サロンの料金改定(値上げ)のため」でした。まず来店回数の変化を確認し、回数が落ちているなら、そちらを戻すほうが先です。

Q4. 来店回数はどうやって測ればいいですか。 A. お客様ごとに「前回来店日からの経過日数」を出し、その中央値を見ます。平均ではなく中央値を使うのは、何年も来ていない方に引っ張られないためです。通常の来店周期(カラーであれば6〜8週間など)を大きく超えている方が、離反しかけているお客様です。

Q5. 店販を伸ばせば利益率は改善しますか。 A. 施術時間を増やさずに売上を足せる点は有効です。ただし女性の店販購入率は12.9%(美容センサス2026年上期)で、前年から1.5ポイント下がっています。店販だけで利益構造を変えるのは難しく、来店回数の維持と組み合わせて考えるのが現実的です。

まとめ

  • 利益率は粗利率ではなく営業利益率で見る。オーナーの人件費を必ず費用に入れる
  • 市場は単価ではなく来店回数が落ちて縮んでいる(女性 年4.18回・前年比−2.8%/単価は+0.2%)
  • 値上げは、節約意識が高まっている局面では回数減を招きやすい。先に来店回数を確認する
  • 新規獲得コストは、再来率とセットで判断する
  • 店は増え、市場は縮み、倒産は過去最多。競争条件は厳しくなっている

出典

  • 株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2026年上期 美容室編」(2026年6月25日発表)
  • 株式会社帝国データバンク「『美容室』の倒産動向(2025年)」
  • 厚生労働省「衛生行政報告例」令和6年度

この記事について

LIKE編集部(株式会社SALON CONCIERGE)が執筆しています。 美容サロン向けにLINE連携の予約・顧客管理サービス「LIKE」を開発・運用しており、 サロンボードとの連携や予約の自動化を、実際にサロン様の現場で導入・運用してきた経験にもとづいて書いています。

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