美容室の同意書|ヘアカラー・ブリーチ前に載せる項目と、書いてはいけない文言
同意書は責任を免れるための書類ではなく、説明したことと確認したことの記録です。載せる項目、書いてはいけない文言、ヘアカラー前の確認とパッチテストの扱いを、法律と業界団体・国の資料をもとにまとめました。
ヘアカラーやブリーチ、縮毛矯正の前に、お客様に同意書を書いていただく美容室が増えています。ところが、ひな形をそのまま使うと、「いかなる場合も当店は一切責任を負いません」のような、法律上は無効になる文言が入っていることがあります。
この記事では、美容室の同意書に何を載せるか、何を書いてはいけないかを、法律の条文と業界団体・国の資料をもとに整理します。載せる項目は施術同意書 項目テンプレートとしてExcelでも無料でお使いいただけます。
先に結論
- 同意書は「責任を免れるための書類」ではなく、説明したことと確認したことの記録です(1章)。
- 事業者の損害賠償責任を全部免除する条項は無効です。故意や重大な過失による責任を一部でも免除する条項も無効です(消費者契約法第8条、2章)。
- ヘアカラーの前は、過去のかぶれの有無・当日の肌の状態・パッチテストを確認し、その結果を残します(4章・5章)。
- 同意書は説明の代わりにはなりません。口頭で説明してから書いていただきます。
毛染めの皮膚障害の実態
消費者庁の事故情報データバンクには、毛染めによる皮膚障害の事例が毎年度200件ほど登録されています(2010〜2014年度に154件・196件・238件・201件・219件)。理美容院での毛染めでかゆみなどの異常を感じた経験がある人は14.6%で、そのうち医療機関を受診した人は3.6%でした(消費者安全調査委員会「毛染めによる皮膚障害」2015年)。異常が出ても、お客様は自分から言い出さないことが多いということです。
1. 同意書は何のためにあるか
美容室の同意書の役割は、次の2つです。
- 施術の前に、何を説明し、何を確認したかを残す
- お客様が内容を理解したうえで施術を希望したことを残す
裏を返せば、同意書はサロンの責任をなくすための書類ではありません。お客様に署名をいただいても、施術でけがをさせた責任がなくなるわけではない、というのが法律の考え方です(2章)。
それでも同意書を作る意味があるのは、説明と確認を毎回同じ手順で行うためです。どのスタッフが担当しても、同じリスクを説明し、同じ項目を確認する。その記録が残っていれば、万一のときに「何を説明し、何を確認していたか」を示せます。
2. 書いてはいけない文言
同意書のひな形には、次のような文言がよく見られます。
| よく見る文言 | 問題点 |
|---|---|
| いかなる場合も当店は一切責任を負いません | 事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項は無効(消費者契約法第8条第1項) |
| 当店の過失による場合も、責任は施術料金の範囲に限ります | 故意または重大な過失による責任を一部でも免除する条項は無効(同条同項) |
| 施術後の苦情は一切受け付けません | 消費者の利益を一方的に害する条項は無効になり得る(同法第10条) |
消費者契約法第8条第1項は、事業者の債務不履行や不法行為によって消費者に生じた損害について、賠償する責任の全部を免除する条項と、故意または重大な過失による責任の一部を免除する条項を無効と定めています。
こうした文言を入れても、サロンは守られません。むしろ、お客様には「何かあっても知らないという店なのか」という印象を与えます。確認の文言は「上記の説明を受け、内容を理解したうえで施術を希望します」にとどめるのが実際的です。
個別の文言が有効かどうかの判断は、弁護士や消費生活センターなどの専門家に確認してください。この記事は法律の解説ではなく、同意書を作るときの注意点の整理です。
3. 同意書に載せる項目
同意書に載せる項目は、大きく5つに分かれます。
| 区分 | 項目 | なぜ載せるか |
|---|---|---|
| 施術と説明 | 施術日・施術名・担当者 | 何について、誰が説明したかを特定する |
| 施術と説明 | 説明した主なリスク | 具体的に書く。「リスクがあります」だけでは何を説明したか分からない |
| 施術と説明 | 仕上がりの限界 | 「一度では希望の明るさまで届かない可能性」など、期待のずれを防ぐ |
| 施術と説明 | 代わりの方法 | 施術が適さない場合の選択肢を示したことを残す |
| 施術前の確認 | かぶれの経験・当日の肌の状態・体調 | 施術してよいかの判断に使う(4章) |
| パッチテスト | 実施の有無・日時・結果 | 業界団体が毎回の実施を求めている(5章) |
| 施術後のご案内 | 異常が出たときの対応・連絡先 | 異常が出ても何もしない人が多い(6章) |
| 確認と署名 | 確認の文言・日付・お名前 | 誰がいつ確認したかを残す |
記載例つきの一覧は施術同意書 項目テンプレートにまとめています。
施術ごとに分けるか、1枚にまとめるか
ヘアカラー・ブリーチ・縮毛矯正では、説明するリスクが違います。共通の項目は1枚にまとめ、「説明した主なリスク」だけを施術ごとに差し替える形にすると、作る手間も記入の手間も抑えられます。
4. ヘアカラーの前に確認すること
ヘアカラーの同意書で、いちばん大事なのは確認の項目です。
日本ヘアカラー工業会は、理美容師向けの案内で、次に当てはまるお客様にはヘアカラーの施術をしないよう求めています(一部を抜粋)。
- 今までにヘアカラーでかぶれたことのある方
- 今までに染毛中または直後に気分の悪くなったことのある方
- 皮膚アレルギー試験(パッチテスト)の結果、皮膚に異常を感じた方
- 頭皮あるいは皮膚が過敏な状態になっている方(病中、病後の回復期、生理時、妊娠中など)
- 頭、顔、首筋にはれもの、傷、皮膚病がある方
- 腎臓病、血液疾患等の既往症がある方
同じ案内では、施術が適さないお客様には、ヘアカラーのリスクを丁寧に説明したうえで、ヘアマニキュアなど別の方法を提案することも求めています。
国の報告書も同じ立場です。消費者安全調査委員会は2015年の報告書で、理美容師に対して、お客様が過去に毛染めで異常を感じた経験の有無や、施術当日の肌の健康状態を確認すること、適さないお客様には別の方法を提案することを求めました。
同意書の「施術前の確認」欄は、この確認を毎回、同じ項目で行うためのものです。カウンセリングシートと内容が重なる場合は、カウンセリングシートの確認欄と1枚にまとめても構いません。
5. パッチテストをどう扱うか
日本ヘアカラー工業会は、理美容師向けの案内で、パッチテスト(皮膚アレルギー試験)を毎回必ず、ヘアカラーの48時間前から行うよう求めています。観察は、テスト液を塗ってから30分後と48時間後の2回です。これまで問題なく使ってきた製品でも、体質の変化でかぶれるようになることがあるため、毎回の実施が必要だとされています。
一方で、実際に行っている人は多くありません。国の報告書の調査では、毛染めの前にいつもセルフテスト(パッチテスト)を行っている消費者は2.3%で、68.0%は「知っているが、実際に行ったことはない」と答えています(消費者安全調査委員会「毛染めによる皮膚障害」2015年、1,829人)。
同意書には、次のことを残しておきます。
- 実施したかどうかと、その日時
- 結果(30分後・48時間後とも異常がなかったか)
- 実施していない場合は、パッチテストの必要性を説明したこと
パッチテストの必要性をお伝えするのは、お客様の安全のためです。同意書に「説明した」と書くことが目的ではありません。
6. 施術後に異常が出たときのご案内
国の報告書では、理美容院での毛染めで異常を感じた人のうち、62.7%が「しばらくすると症状が治まったので特に何もしなかった」と答えています。症状が出ても受診しないまま、次の毛染めを繰り返すと、症状が重くなることがあります。
同意書やお渡しする控えには、異常が出たときの対応を書いておきます。
かゆみ・赤み・腫れなどが出た場合は、こすらずに洗い流し、皮膚科を受診してください。当店にもご連絡をお願いします。
ご連絡をいただいたら、次回からヘアカラーを行わないことと、その理由をカルテに残してください。担当者が替わっても、同じ薬剤を使わないようにするためです。
7. 同意書の保管と、個人情報の扱い
同意書には、お客様のお名前と健康に関わる情報が書かれます。
個人情報保護法は、本人から直接書面で個人情報を取得する場合、あらかじめ利用目的を明示することを求めています(第21条第2項)。また、病歴などの「要配慮個人情報」は、あらかじめ本人の同意を得て取得しなければなりません(第20条第2項)。同意書の冒頭に利用目的を書き、健康に関わる項目は同意のうえで記入していただく形にしてください。
記入済みの同意書は、紙なら鍵のかかる場所に、データなら閲覧できる人を限って保管します。
8. よくある質問
Q1. 同意書にサインをもらえば、トラブルが起きても責任を問われませんか。 A. いいえ。事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項や、故意・重大な過失による責任を一部でも免除する条項は無効です(消費者契約法第8条)。同意書は、説明したことと確認したことの記録として使ってください。
Q2. 同意書はすべてのお客様に書いてもらうべきですか。 A. ヘアカラー・ブリーチ・縮毛矯正など、髪や頭皮への負担が大きく、事前の確認が必要な施術を中心に使うのが一般的です。カットだけのお客様にまで求めると、かえって手間と不信感が増えます。
Q3. パッチテストをしていないお客様にヘアカラーをしてもよいですか。 A. 日本ヘアカラー工業会は、パッチテストを毎回必ず、ヘアカラーの48時間前から行うよう求めています。過去にかぶれたことのある方、パッチテストで異常が出た方には、ヘアカラーを行わず、ヘアマニキュアなど別の方法をご提案してください。
Q4. 同意書は何年保管すればよいですか。 A. 法律で一律の保管期間が定められているわけではありません。お客様のご来店が続く間はカルテと一緒に保管し、保管期間と廃棄の方法を店のルールとして決めておくことをおすすめします。判断に迷う場合は専門家に確認してください。
Q5. 紙ではなく、LINEやタブレットで同意をもらってもよいですか。 A. 構いません。大事なのは、何を説明し、何を確認し、お客様がそれを理解したうえで施術を希望したことが、後から確かめられる形で残っていることです。
9. 仕組みで支えるなら
ここまでは、紙の同意書でも成り立つ話です。同意書は説明の代わりにはならず、口頭で説明し、施術の直前に確かめることが前提です。
そのうえでご紹介すると、私たちが提供している「LIKE」のLINEカウンセリングでは、サロンが質問の項目を自由に設定でき、答え方を「はい/いいえ」や選択式にしたり、必須にしたりできます。ヘアカラーでのかぶれの経験や当日の体調の確認を、来店前にLINEで答えていただく質問に入れておけば、ご来店前に把握でき、答えはお客様ごとのカルテにまとまります。
ただし、来店前の回答だけで判断せず、当日の頭皮の状態は施術の直前に必ず目で確かめてください。機能の詳細はカルテ機能のページをご覧ください。
10. まとめ
- 同意書は、説明したことと確認したことの記録。責任をなくすための書類ではない
- 「一切責任を負いません」は無効。故意・重大な過失による責任の一部免除も無効(消費者契約法第8条)
- 説明したリスクは具体的に書く。仕上がりの限界と、代わりの方法も残す
- ヘアカラーの前は、かぶれの経験・当日の肌の状態・パッチテストを毎回確認する
- 異常が出たときの対応(こすらず洗い流し、皮膚科を受診)をお伝えし、出た方には次回からヘアカラーを行わない
- 利用目的を明示し、健康に関わる項目は同意を得て記入していただく
項目の一覧は施術同意書 項目テンプレートから、Excelで無料でお使いいただけます。
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出典・参考
- 消費者契約法(e-Gov法令検索) 第9条:平均的な損害の額を超える違約金の定めは、その超える部分が無効
- 日本ヘアカラー工業会「理美容師の皆さまへのお願い」 ヘアカラーの施術に適さないお客様の条件
- 日本ヘアカラー工業会「皮膚アレルギー試験(パッチテスト)を実施しましょう」(理美容師向け) 毎回必ず、ヘアカラーの48時間前から
- 消費者安全調査委員会「事故等原因調査報告書 毛染めによる皮膚障害」(2015年10月23日) 皮膚障害の登録件数、理美容院での異常経験、理美容師への意見
- 個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索) 第2条第3項(要配慮個人情報)、第20条第2項(取得の同意)、第21条第2項(書面で取得する際の利用目的の明示)
- 個人情報保護委員会「個人情報保護法について」 お客様の情報を扱う際の基本的な考え方
制度の内容は改定されることがあります。手続きの詳細・期限・手数料は所轄の窓口で最新の情報をご確認ください。 当編集部の考え方は編集方針に記載しています。
この記事について
LIKE編集部(株式会社SALON CONCIERGE)が執筆しています。 美容サロン向けにLINE連携の予約・顧客管理サービス「LIKE」を開発・運用しており、 サロンボードとの連携や予約の自動化を、実際にサロン様の現場で導入・運用してきた経験にもとづいて書いています。
構成は編集部で組み、下書きの作成には文章生成AIを利用しています。 数値と制度の記述は一次情報にあたって確認し、編集担当(山本)が内容を確認してから公開しています。
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