顧客管理

美容室のRFM分析のやり方|9マスで顧客を分けて、誰に何を送るか決める

名簿が増えると一斉配信は効かなくなります。美容室に合わせたRFMの分け方と、9マスそれぞれに何を送るかを整理しました。

LLIKE編集部 読了 約11分
美容室のRFM分析のやり方|9マスで顧客を分けて、誰に何を送るか決める

顧客名簿が2,000人を超えたあたりから、多くのサロンが同じ壁にぶつかります。全員に同じ連絡をしても、ほとんど反応がない。

反応がないだけならまだしも、一斉配信を繰り返すとブロックが増え、連絡手段そのものを失います。名簿は増えているのに、届く相手は減っていく。これが起きています。

解決策は、名簿を分けることです。そのための古典的で確実な方法がRFM分析です。難しそうな名前ですが、やることは3つの数字で顧客を並べ替えるだけです。エクセルでできます。

1. RFMとは

3つの指標の頭文字です。

記号意味美容室での中身
R(Recency)最終来店からの経過日数最後に来てから何日経ったか
F(Frequency)来店頻度直近1年(または通算)の来店回数
M(Monetary)累計金額直近1年(または通算)の合計会計額

この3つで顧客を分けると、「誰に、いま、何を送るべきか」が決まります。

美容室でのRFMの特徴

一般的な小売業と違い、美容室には来店サイクルという明確な周期があります。これがRFMの精度を大きく上げます。

小売業では「最終購入から90日」が長いのか短いのか判断できませんが、美容室では来店サイクル中央値の何倍かで判断できます。サイクル52日の店なら、90日は1.7倍。明確に「遅れている」と分かります。

つまりRを日数ではなく「サイクルの倍数」で持つのが、美容室でのRFMのコツです。→ 来店サイクルの測り方

2. 実際に分ける

準備するデータ

顧客ごとに、次の4項目です。予約台帳から出せます。

項目内容
顧客ID同一人物の判定に使う
最終来店日Rの計算
直近1年の来店回数F
直近1年の合計金額M

R:サイクルの倍数で3段階

サイクル中央値をMとして(ここでは52日とします)、

区分基準日数(M=52の場合)状態
R3〜1.2M〜62日通っている
R21.2M〜1.8M62〜94日遅れている
R11.8M〜94日〜離れかけ/離れた

F:来店回数で3段階

区分直近1年の来店回数
F35回以上
F22〜4回
F11回

M:金額で3段階

上位30%をM3、中間40%をM2、下位30%をM1とします。金額の絶対額ではなく自店の中での順位で分けるのがポイントです。

分けた結果

3×3×3で27通りになりますが、全部を使う必要はありません。美容室で意味があるのは5つだけです。

名前条件人数の目安状態
優良客R3・F3全体の10〜15%通い続けている常連
離反しかけの優良客R1〜R2・F3数%最優先。放置すると失う
育成中R3・F220〜30%定着しつつある
新規・1回客F1・R3多い2回目に来るかの分岐点
休眠R1・F1名簿の大半当面は対象外

3. どこから手をつけるか

最優先は「離反しかけの優良客」(R1〜R2・F3)

ここが、RFMを使う最大の理由です。

年に5回以上来ていた方が、いつもの周期を過ぎても来ていない。人数は多くありませんが、1人あたりの損失額が最大です。

年6回・単価9,000円の方が離れると、年間54,000円。5人で27万円です。一方、1回来ただけの方が戻らなくても、失うのは数千円の期待値でしかありません。

にもかかわらず、多くの店ではこの層に気づけていません。「常連さん」という認識が強いぶん、来ていないことに気づくのが遅れるからです。「そういえば最近見ないね」と話題に出た時点で、すでに3か月経っています。

この層は、リストを毎週見るだけで検知できます。そして連絡すれば、かなりの割合が戻ります。理由は単純で、不満で離れたわけではないことが多いからです。

送るもの:一斉配信ではなく、前回の施術内容に触れた個別の連絡。

「◯◯様 ご無沙汰しております。前回は◯月に、明るめのアッシュでカラーをさせていただきました。そろそろ3か月ほど経ちますので、根元が気になる頃かと思います。よろしければご相談ください」

次に「新規・1回客」(F1・R3)

まだ1回しか来ていないが、日が浅い方。2回目に来るかどうかの分岐点にいます。

人数が多いので、ここは個別対応ではなく設計で対応します。→ 新規のお客様が2回目に来ない理由

「優良客」(R3・F3)にはやりすぎない

通えている方に頻繁に連絡すると、うるさく感じられます。この層への連絡は減らしてください。

やるとすれば、来店サイクルの手前で空き状況を伝える程度で十分です。

「休眠」(R1・F1)は当面対象外

名簿の大半を占めますが、戻る確率がもっとも低い層です。ここに一斉配信をして、ブロックで連絡手段を失うのが最悪の展開です。

キャンペーンなどで一度に多くへ送りたい場合でも、この層は外してください。

4. なぜ「金額(M)」の優先度は低いのか

一般的なRFM分析では金額が重視されますが、美容室ではRとFのほうが実務価値が高いと考えています。

理由は3つです。

① 単価の幅が小さい。小売業のように1人が10倍買うことはまれで、多くのお客様が5,000〜15,000円の範囲に収まります。

② メニュー構成で決まってしまう。縮毛矯正をされる方の金額が高いのは当然で、それは顧客の価値というより施術内容の話です。

③ 頻度のほうが売上に直結する。単価12,000円で年3回(36,000円)より、単価7,000円で年7回(49,000円)のほうが大きい。美容室ではFがMを支配します。

したがって、まずRとFの2軸(3×3の9マス)で始めてください。Mは、優良客の中でさらに優先順位をつけたいときに追加すれば十分です。

5. 9マスで運用する

R×Fの9マスに人数を入れると、店の状態が一目で分かります。

F1(1回)F2(2〜4回)F3(5回以上)
R3(通っている)14218678
R2(遅れている)987422
R1(離れかけ)1,20431241

この表から読めること

  • R1・F3が41名:最優先。年5回以上来ていた方が離れかけている。41名 × 年6回 × 8,500円 = 年間209万円分
  • R1・F1が1,204名:名簿の過半。ここに一斉配信しても意味はない
  • R3・F1が142名:直近の新規。ここの2回目転換が今後を決める
  • R2・F2が74名:あと一押しで定着する層

毎月この表を作り、R1・F3の人数の推移だけを見る。この1マスが増えていれば、常連の維持が崩れ始めているサインです。売上に出る前に分かります。

6. エクセルでの作り方

顧客ごとの表を作り、3列足すだけです。

R(サイクルの倍数)

=(TODAY()-最終来店日) / サイクル中央値

R区分

=IF(倍数<=1.2, "R3", IF(倍数<=1.8, "R2", "R1"))

F区分

=IF(来店回数>=5, "F3", IF(来店回数>=2, "F2", "F1"))

あとはピボットテーブルで、R区分×F区分の人数を数えれば9マスの表になります。慣れれば30分で作れます。

具体的な組み方はリピート率をエクセルで管理するにまとめています。

7. 9マス別に、何を送るか

分類しただけでは意味がありません。マスごとに送るものを決めます。

マス状態送るもの頻度
R3・F3優良客・通えている空き状況のみ。手厚くしすぎないサイクル手前に1回
R3・F2育成中次回の目安+空き状況サイクル手前に1回
R3・F1直近の新規お礼+次回の目安施術後と、サイクル手前
R2・F3優良客が遅れている前回の施術に触れた個別連絡気づいた時点で1回
R2・F2遅れている前回に触れた短い連絡1回
R2・F11回客が遅れている軽い案内1回まで
R1・F3離反しかけの優良客(最優先)個別に。文面を都度書く1回、反応なければ1か月後にもう1回
R1・F2離れかけ掘り起こし文面四半期に1回まで
R1・F1休眠原則送らない年1〜2回、明確な理由があるときのみ

R1・F3(最優先層)の文面

この層だけは、テンプレートを使わないでください。カルテを見て、その方の話を書きます。

◯◯様 ご無沙汰しております。前回は◯月に、明るめのアッシュでカラーをさせていただきました。 そのとき「職場で暗く見られたくない」とおっしゃっていたのが印象に残っています。 そろそろ3か月ほど経ちますので、根元が気になる頃かと思います。伸びた部分だけを合わせる形でも整いますので、よろしければご相談ください。

年5回以上来ていた方に一斉配信の文面を送ると、「その他大勢として扱われた」という印象になります。人数は少ない層なので、時間をかける価値があります。

R3・F3(優良客)に送りすぎない

通えている方への連絡は減らしてください。うるさく感じられ、ブロックの原因になります。「よく来てくれる人にこそ手厚く」は、連絡の頻度に関しては逆です。

8. やってはいけないこと

27分類を全部使う。 運用できません。R×Fの9マスで十分です。

休眠層に一斉配信する。 反応が出ないうえ、ブロックで将来の連絡手段を失います。

分類したまま、連絡内容を変えない。 分けただけでは意味がありません。R2とR1では、届けるべき内容が違います。

顧客IDの重複を放置する。 同じ方が2つのIDを持っていると、両方ともF1に分類されます。RFMの精度は、顧客IDの正確さで決まります。電話番号や氏名の重複を先に確認してください。

よくある質問

Q1. RFM分析は何人くらいの名簿から意味がありますか。 A. 300人程度から効果が出ます。それ以下なら全員を把握できるので、分類の必要性は低くなります。1,000人を超えると、分類なしでの運用はほぼ不可能になります。

Q2. Rの基準を日数ではなくサイクルの倍数にするのはなぜですか。 A. 「90日」が長いのか短いのかは、店によって違うからです。サイクル45日の店では2倍で明確に遅れていますが、サイクル80日の店ではまだ範囲内です。倍数で持てば、メニュー区分別にも同じ基準が使えます。

Q3. 金額(M)は使わなくてよいのですか。 A. 最初は不要です。美容室は単価の幅が小さく、売上への影響は頻度(F)のほうが大きいためです。まずR×Fの9マスで運用し、優良客の中でさらに優先順位をつけたくなった段階でMを足してください。

Q4. どのくらいの頻度で更新すればよいですか。 A. 9マスの人数集計は月次、R1・F3のリスト(最優先層)は週次です。特にR1・F3は、気づくのが遅れるほど戻りにくくなります。

Q5. 休眠客には一切連絡しないほうがよいですか。 A. 全面的に切る必要はありませんが、頻度は最小にしてください。年に1〜2回、明確に価値のある内容(大きな設備更新、移転など)に限るのが現実的です。反応の低い層に送り続けると、配信全体の到達率に影響します。

Q6. RFMと失客対策はどう違いますか。 A. RFMは「名簿全体をどう分けるか」、失客対策は「離れた方をどう戻すか」です。RFMのR1層への打ち手が失客対策にあたります。詳しくは美容室の失客対策 完全ガイドをご覧ください。

まとめ

  • 名簿が増えると一斉配信は効かなくなる。分けることが前提になる
  • 美容室ではRを日数ではなく「来店サイクルの倍数」で持つ。これで精度が上がる
  • 27分類は使わない。R×Fの9マスで十分運用できる
  • 最優先はR1〜R2 × F3(離反しかけの優良客)。人数は少ないが1人あたりの損失が最大で、しかも気づかれにくい
  • 金額(M)の優先度は低い。美容室では単価の幅が小さく、頻度が売上を支配する
  • 休眠層(R1・F1)への一斉配信はしない。ブロックで連絡手段を失う
  • RFMの精度は顧客IDの正確さで決まる。重複登録を先に潰す

指標全体の位置づけは美容室のリピート率 完全ガイドにまとめています。

この記事について

LIKE編集部(株式会社SALON CONCIERGE)が執筆しています。 美容サロン向けにLINE連携の予約・顧客管理サービス「LIKE」を開発・運用しており、 サロンボードとの連携や予約の自動化を、実際にサロン様の現場で導入・運用してきた経験にもとづいて書いています。

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