美容室のシャンプー台・セット面の寸法と設置費用|保健所の面積基準・給湯器の号数・中古の注意点
シャンプー台とセット面は、置いた後に動かしにくい設備です。台数は保健所の面積基準から逆算し、寸法は実際の動きで決め、給湯器は号数から同時に使える台数を計算します。設置費用の内訳と中古品の注意点もまとめました。
シャンプー台とセット面は、美容室の内装でいちばん動かしにくい設備です。シャンプー台は給排水と給湯の配管につながり、セット面は席数、つまり1日に受けられるお客様の数を決めます。置いてから「狭かった」「お湯が足りない」と気づいても、簡単にはやり直せません。
この記事では、シャンプー台とセット面の台数・寸法・設置費用・中古品の注意点を、保健所の基準と計算で確かめられる範囲で整理します。
先に結論
- 台数は、まず保健所の面積基準から逆算します。ただしいすの数え方は自治体によって違います(1章)。
- 寸法をmm単位で決めた法令の基準はありません。保健所が見るのは主に面積と台数です。席の間隔は、実際に人が動けるかで決めます(2章)。
- シャンプー台は、本体の寸法よりも倒したときの長さと配管の位置で場所が決まります(3章)。
- 給湯器は号数と冬の水温から、同時に何台使えるかを計算できます(4章)。
- 費用は本体だけで判断せず、配管・給湯器・電源・据え付けを分けて見積もってもらいます(5章)。
1. 台数は保健所の面積基準から逆算する
美容室を開くには、保健所への美容所開設届と、開業前の構造設備の検査が必要です(手続きの流れは美容室開業の手続き)。検査で必ず見られるのが、作業室の面積といすの台数です。
この基準は国が一律に決めているのではなく、自治体ごとに定められています。3つの自治体の資料を比べると、いすの数え方からして違います。
| 自治体 | 数えるいすと、必要な面積 |
|---|---|
| 東京都(目黒区など) | セット椅子・シャンプー椅子・コールド待ち椅子などを数える。作業室は13㎡以上で6台まで、それを超えると1台ごとに3㎡を加える |
| 新潟県三条市 | セット椅子だけを数える(一部の施術にのみ使う椅子は含まない)。2脚まで9.9㎡以上、以降1脚ごとに3.3㎡以上を加える |
| 広島市 | セットイス・シャンプーイス・ワゴンを合わせて数える。市の求積例では9.0+1.65×(台数−4)㎡以上 |
たとえばセット面2台・シャンプー台1台の店なら、東京都の基準では3台として数え、作業室は13㎡以上です。三条市の基準ではセット椅子2脚として9.9㎡以上になります。広島市の求積例では、ワゴン2台も含めた5台で10.65㎡以上と計算されています。
同じ店の図面でも、自治体によって必要な面積の計算が変わるということです。面積は壁の内側で測る「内法(うちのり)」で計算します。壁の中心で測った図面の面積より小さくなるので注意してください。
待合の場所も基準に入っています。東京都の目黒区は「作業室の6分の1程度」、三条市は「3.3㎡以上」を目安とし、どちらも作業室とはっきり区切ることを求めています。
物件を契約する前に、図面を持って管轄の保健所へ相談してください。台数を決めてから「面積が足りない」と分かると、席を減らすか、物件を探し直すことになります。物件選びの判断軸は美容室の物件・立地の選び方にまとめています。
2. セット面の寸法と間隔は「人が動けるか」で決める
「セット面 寸法」「セット面 間隔」と調べると、さまざまな数字が出てきます。しかし、セット面どうしの間隔をmm単位で定めた法令の基準はありません。保健所の基準が決めているのは、1章の面積と台数、床の材料、照明(作業面で100ルクス以上)、換気などです。
そのため、セット面の間隔は実際に施術するときの動きから決めます。図面の上で決める前に、次の動きが無理なくできるかを確かめてください。
- いすを回したとき:お客様を乗せたいすが、隣の席やワゴンに当たらずに回るか
- 背後を通るとき:施術中のスタイリストの後ろを、別のスタッフやお客様が通れるか
- ワゴンを置いたとき:左右どちらにワゴンを置いても、通路がふさがらないか
- ドライヤーを使うとき:コンセントの位置から、コードが通路を横切らないか
- カラーやパーマのとき:放置中にお客様が立ち上がって移動しても、ぶつからないか
いちばん確実なのは、床にテープで席と通路の位置を貼り、実際にいすとワゴンを置いて動いてみることです。居抜き物件なら、前の店の配置をそのまま測っておくと比較の基準になります。
セット面の数は、スタッフの人数で決めます。開業当初から席を多くしすぎると、内装費が増えるうえ、作業室の面積も多く必要になります。
3. シャンプー台は「倒したときの長さ」と「配管の位置」で決まる
シャンプー台には、お客様の頭の後ろにボウルがあるバックシャンプーと、横にあるサイドシャンプーがあります。現在の美容室ではバックシャンプーが一般的です。
寸法を見るときは、ボウル単体の幅と奥行きだけで判断しないことが大切です。製品のカタログには外形寸法(W×D×H)が載っていますが、ボウル単体なら幅は40cm台、いすと一体になった製品では90cm台と、製品によって大きく違います。
置き場所を決めるうえで大事なのは、次の3つです。
- 倒したときの全長:お客様が横になった状態で、足元の先まで何cm必要か。足元を人が通るなら、その幅も足す
- スタッフが立つ場所:シャンプーする人が、ボウルの後ろ側で無理なく立てるか
- 配管の位置:給水・給湯・排水の管を、どこから引いてどこへ流すか
特に排水は、水が自然に流れるよう配管に傾きをつける必要があります。排水口から遠い位置にシャンプー台を置くと、床を上げて配管を通すことになり、工事費が増えることがあります。スケルトン物件では、シャンプー台の位置を排水の位置から先に決めると、後の手戻りが少なくなります。
洗い場には、洗髪用と器具洗い用を分けることを求める自治体があります(東京都など)。シャンプー台とは別に、器具や手を洗う流しの場所も、図面に入れておいてください。
4. 給湯器は「同時に何台使えるか」を計算する
シャンプー台を2台以上置くときに見落としやすいのが、給湯器の能力です。
ガス給湯器の能力は「号数」で表します。号数は、水温より25℃高いお湯を1分間に何リットル出せるかを示す数字です。24号なら、水温+25℃のお湯を1分間に24リットル出せます。
ここから、実際に出せるお湯の量を計算できます。
1分間に出せるお湯の量(L)= 号数 × 25 ÷(使う温度 − 水道水の温度)
水道水が冷たい冬ほど、温める幅が大きくなり、出せるお湯の量は減ります。たとえば、使う温度を40℃、冬の水道水を10℃とすると、24号の給湯器が1分間に出せるお湯は24×25÷30=20リットルです。
一方、シャワーは流しっぱなしにすると、3分間でおよそ36リットル、1分間に約12リットルを使います(東京都水道局の節水の資料より)。これを当てはめると、次のようになります。
| 同時に使うシャンプー台 | 24号の給湯器(冬・水温10℃、1分間に20リットル)で足りるか |
|---|---|
| 1台(1分間に約12リットル) | 足りる |
| 2台(1分間に約24リットル) | 足りない |
2台を同時に使うなら、24リットル×30÷25=28.8号以上が必要という計算になります。実際には、器具を洗う流しでもお湯を使いますし、シャワーヘッドによって流量は変わります。
この計算は目安です。実際の号数は、使うシャワーヘッドの流量と地域の冬の水温を伝えて、設備業者に計算してもらってください。テナントによっては、給湯器を置く場所やガスの容量に制限があることもあるので、物件の契約前に確認しておくと安心です。
なお、洗髪設備に「給湯可能であること」を求める自治体もあります(三条市など)。
5. 設置費用は「本体以外」を分けて見積もってもらう
シャンプー台やセット面の費用を比べるとき、本体の価格だけを比べると判断を誤ります。設置には、本体のほかに次の費用がかかります。
| 費用の項目 | 内容と、確認すること |
|---|---|
| 本体 | シャンプー台・シャンプー椅子・セット椅子・鏡。いすとボウルの組み合わせに制限がないか |
| 搬入・据え付け | 運び込みと床への固定。入口・階段・エレベーターの幅が足りるか |
| 給水・給湯の配管 | 水道とお湯の管をシャンプー台まで引く。既存の配管をどこまで使えるか |
| 排水の配管 | 排水管と傾きの確保。床を上げる工事が必要か |
| 給湯器 | 本体と設置工事。号数(4章)、置き場所、ガスの容量 |
| 電源 | 電動のいす、ヘッドスパ機能、ドライヤー。必要なコンセントの数と電気の容量 |
見積もりは、項目ごとに分けて出してもらってください。「設備一式」とまとめられていると、何が含まれていて何が別料金なのかが分かりません。内装工事全体の費用の考え方は美容室の内装費用、開業資金全体の中での位置づけは開業資金の総額と内訳で解説しています。
6. 中古品を選ぶときの注意点
シャンプー台やセット椅子は、中古品も多く出回っています。新品より費用を抑えられますが、水回りの設備は故障すると営業に直接響くため、次の点を確認してから選んでください。
- 保証の有無と期間:保証の対象外になる部品(クッションなどの消耗品)も確かめる
- 付属品:床に固定するボルトやアンカー、シャワーヘッド、ホースが付いているか。付属しない場合は別に用意する
- 陶器と金具の状態:ボウルのひび・欠け、水栓や金具のさび
- 組み合わせ:シャンプーボウルといすが、同じシリーズでないと組み合わせられない製品がある
- 型番と部品:型番を控え、交換部品が今も手に入るかを確かめる
- 据え付けを誰が行うか:購入先が据え付けまで行うのか、自分で設備業者を手配するのか
中古品は本体が安くても、据え付けと配管の費用は新品と変わりません。本体の価格差だけでなく、5章の項目を足した総額で比べてください。
7. 席数が決まったら、予約とお客様との連絡手段も決める
セット面とシャンプー台の台数は、1日に何人のお客様を受けられるかを決めます。そして、その席を埋め続けるのは、新しいお客様よりも、2回目・3回目に来てくださるお客様です。
設備と同じく、開業後に変えにくいのがお客様とのつながり方です。予約の窓口をどこにするか、カウンセリングとカルテをどう残すか、次回のご来店をどうご案内するかは、開業前に決めておくと、1人目のお客様から同じやり方で続けられます。決めておくことの一覧は、美容室 開業の流れの10章にまとめました。
私たちが提供しているLIKEは、LINEで予約・カウンセリング・カルテ・次回のご案内をまとめられる仕組みです。開業準備のどこで何を決めればよいかは、開業と同時にLIKEを始めるをご覧ください。
8. よくある質問
Q1. セット面とセット面の間は、何cm空ければよいですか。 A. 法令でmm単位の基準は定められていません。保健所の基準が決めているのは、作業室の面積といすの台数などです。いすを回す、背後を通る、ワゴンを置くといった動きが無理なくできるかを、床にテープを貼って実際に確かめてから決めてください。
Q2. 10㎡の部屋に、セット面とシャンプー台を何台置けますか。 A. 自治体によって答えが変わります。東京都の基準では作業室は13㎡以上が必要で、シャンプー椅子も台数に含めます。三条市ではセット椅子2脚まで9.9㎡以上です。図面を持って、管轄の保健所に事前に相談してください。
Q3. シャンプー台を2台置くとき、給湯器は何号が必要ですか。 A. 使う温度40℃・冬の水道水10℃・シャワー1台あたり1分間に12リットルとすると、2台同時なら約29号以上という計算になります。シャワーヘッドの流量や地域の水温で変わるため、設備業者に計算を依頼してください。
Q4. 中古のシャンプー台でも、保健所の検査に通りますか。 A. 構造設備の検査で見られるのは、洗い場が流水式であることなど、設備が基準を満たしているかどうかで、新品か中古かではありません。ただし、据え付けと配管は新品と同じように必要です。
Q5. 居抜き物件のシャンプー台は、そのまま使えますか。 A. 使える場合もありますが、給湯器の号数、排水の流れ、水栓やボウルの状態を確認してください。前の店と台数が違う場合は、保健所の面積基準も改めて確かめる必要があります。
9. まとめ
- 台数は保健所の面積基準から逆算する。いすの数え方は自治体で違うので、物件の契約前に保健所へ相談する
- 面積は壁の内側で測る内法で計算する
- セット面の間隔にmm単位の法令の基準はない。床にテープを貼り、実際の動きで決める
- シャンプー台は、倒したときの全長と排水の位置から場所を決める
- 給湯器は「号数×25÷(使う温度−水温)」で、同時に何台使えるかを計算する
- 費用は本体・据え付け・配管・給湯器・電源に分けて見積もってもらう
- 中古品は本体が安くても、据え付けと配管の費用は変わらない
出典・参考
- 東京都保健医療局「美容所の構造設備基準」 作業室13㎡以上・13㎡で6台まで・1台ごとに3㎡加算、洗場は流水装置、照度100ルクス以上
- 目黒区「美容所の開設」構造設備基準 台数にシャンプー椅子を含むこと、洗髪用と器具洗い用の洗場を分けること、待合は作業室の6分の1程度
- 三条市「理・美容室の構造基準等について」 作業椅子2脚まで9.9㎡以上・1脚ごとに3.3㎡加算(セット椅子のみ数える)、洗髪設備は給湯可能であること、待合3.3㎡以上
- 広島市「美容所の平面図(見本)」 必要な作業場面積の求積例(セットイス・シャンプーイス・ワゴンを台数に含める)
- 東京都水道局「節水のお願い」 シャワーを3分間流しっぱなしにすると約36リットル
- 厚生労働省「生活衛生関係営業」 美容所の開設に関する制度。構造設備基準の具体的な要件は自治体の条例によります
制度の内容は改定されることがあります。手続きの詳細・期限・手数料は所轄の窓口で最新の情報をご確認ください。 当編集部の考え方は編集方針に記載しています。
この記事について
LIKE編集部(株式会社SALON CONCIERGE)が執筆しています。 美容サロン向けにLINE連携の予約・顧客管理サービス「LIKE」を開発・運用しており、 サロンボードとの連携や予約の自動化を、実際にサロン様の現場で導入・運用してきた経験にもとづいて書いています。
構成は編集部で組み、下書きの作成には文章生成AIを利用しています。 数値と制度の記述は一次情報にあたって確認し、編集担当(山本)が内容を確認してから公開しています。
発行 — 株式会社SALON CONCIERGE(2018年2月13日設立) 発行責任者 — 代表取締役 久保 佑太 所在地 — 〒160-0022 東京都新宿区新宿1-34-15 新宿エステートビル9F-A
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